士業のホームページ制作は、他業種の「会社案内サイトを作る」とは前提が違います。誰に向けたサイトなのかで、必要なページ数も、集まる人数の桁も変わるからです。この記事では、当社が実際に計測しているサイトの数値と、実際に制作した士業案件の記録だけを根拠に、発注前に決めるべきことを順番に整理します。
推測や一般論は書きません。数値はすべて出典と母集団、除外した件数まで明示します。
目次
- 1 先に結論
- 2 1. 事務所サイト1本にまとめるか、取扱分野ごとに分けるか
- 3 2. 個人の依頼者向けと、法人顧問向けは別物です
- 4 3. 検索には出ているのに、クリックされていない
- 5 4. 広告に関するルールは、要件定義の最初に確認する
- 6 5. 「お客様の声」「解決事例」をどう扱うか
- 7 6. 何ページ必要か。費用より先にこれを決める
- 8 7. 制作期間と、着手すべき時期
- 9 8. 実際にあった依頼背景
- 10 9. 士業の制作実績
- 11 10. 採用は、士業サイトの現実的な目的です
- 12 11. 更新を内製化する。CMSとマニュアル
- 13 12. セキュリティ。依頼者の情報を扱う前提で
- 14 13. 公開後、何をどう見るか
- 15 14. 誰が担当し、こちらの負担はどれくらいか
- 16 15. 契約・修正・中止の条件
- 17 16. 作る側に倒れる条件
- 18 まとめ:発注前に手元で決めておく6つ
先に結論
- 最初に決めるのは費用ではなく「事務所サイト1本にするか、取扱分野ごとに分けるか」です。ここでページ数も見積りも変わります。
- 当社が士業と分類して計測している15サイトの月間セッションは中央値3,685、最小211、最大57,059(2026年5月上旬時点の30日間)。同じ士業でも桁が違います。
- 検索面には出ているのにクリックされていない状態は実在します。表示1,000回以上の8サイト合算でCTR0.92%、平均掲載順位は5位台から12位台に分布していました。
- 広告に関するルールは士業ごと・所属会ごとに異なります。要件定義の最初に、所属会の規程を確認する工程を置いてください。制作会社が代わりに判断できる領域ではありません。
- 当社の士業実績4件は4ページ/15ページ/24ページ/34ページと8倍以上の幅があります。相場より先に「何ページ必要か」を決めるほうが早いです。
- 士業の発注動機は集客だけではありません。実際の記録に残っているのは「更新の内製化」「独立したサイトの新規立ち上げ」「採用強化」です。
以下、見込み客から実際に出る順番で答えていきます。
士業系15サイトの月間セッション。最小211、最大57,059、中央値3,685
出典:GrowGroupがアクセス解析を担当する士業系15サイトの実測(2026年5月時点の1か月間=月間)。★このうち13サイトは同一の事務所が取扱分野ごとに運用しているもので、独立した事業者は3者です。したがって「士業15社の比較」ではなく、分野を分けたときの差としてご覧ください。横軸は対数目盛です。
1. 事務所サイト1本にまとめるか、取扱分野ごとに分けるか
士業のホームページ制作で最初に分かれ道になるのが、この設計判断です。事務所を紹介する1サイトにまとめるのか、相続・債務整理・離婚といった取扱分野ごとに別サイトを立てるのか。ページ数、CMS設計、見積り、公開後の運用工数まで、ここで決まります。
当社が計測できている実測データを見ると、この判断は現実に分かれています。士業と分類している15サイトのうち、サイトの役割が分野を絞った単一テーマのサイトが11件、事務所全体を紹介するコーポレートサイトが4件でした(2026年5月上旬時点の30日間、以下同じ)。
ここで正直に書いておきます。この15サイトのうち大半は、同一の事務所が取扱分野ごとに別々に運用しているサイト群です。当社の計測アカウント上は3つのアカウントに紐づいており、そのうち1つが13サイトを占めます。したがって「士業15社の比較」ではありません。読み替えるべきは、1つの事務所が分野別にサイトを分けたとき、分野によって集まる人数がどれだけ違うかという話です。
分野を分けたときのトラフィックの振れ幅
15サイトの月間セッションは、少ないもので211、多いもので57,059でした。中央値は3,685です。同じ事務所が運用していても、扱うテーマによって桁が2つ違うということです。個人の相談需要が大きいテーマのサイトが上位を占め、それ以外は数百から数千にとどまります。
役割別の中央値も出しておきます。分野特化のサイト(n=11)が5,027、コーポレートサイト(n=4)が1,952でした。母数がそれぞれ11件・4件と小さいので断定はしません。傾向として、テーマを絞ったサイトのほうが検索からの流入を取りやすい、という読み方にとどめてください。
一方で、逆方向の数字もあります。GA4のコンバージョン発生率をセッション合計で割って出すと、コーポレートサイト側が1.08%(130件/12,029セッション)、分野特化側が0.54%(753件/139,008セッション)でした。ただしGA4のコンバージョン設定は各サイトの運用者が個別に決めており、当社の計測設計外のサイトも含まれます。定義が揃っていない指標の合算なので、絶対値ではなく「人数が多い=問い合わせが多い、とは限らない」という含意だけを受け取ってください。
どちらを選ぶかの判断材料
実測から言えるのは次の2点です。ひとつ、分野を絞ったサイトは検索からの人数を取りやすいが、分野ごとにサイトを作れば運用対象がその数だけ増えます。ふたつ、事務所サイト1本は人数こそ伸びにくいものの、来訪者が問い合わせまで進む割合は低くありませんでした。
現実的な進め方は、まず事務所サイトを整えて計測を入れ、どの分野の検索需要が実際にあるかを見てから分野サイトを足す順序です。当社の実績にも、4ページの小さなコーポレートサイトから立ち上げた例があります(後述の22547)。
他社に見積りを取るときは、次の点を確認してください。「分野サイトを増やす場合、テンプレートを流用して2サイト目以降のコストを下げられるか」「1サイト目の計測データを見てから2サイト目を判断する進め方に対応できるか」。この2つに答えられる会社は、運用まで含めて設計しています。
2. 個人の依頼者向けと、法人顧問向けは別物です
同じ「士業のホームページ」でも、個人の依頼者を集めるサイトと、法人の顧問契約を狙うサイトでは数字の性格がまったく違います。ここを1つの平均で語ると、判断を誤ります。
実測15サイトのうち、個人向けが12件、法人向けが3件でした。月間セッションは、法人向けの3件はいずれも1,000未満(3桁台)でした。個人向けの12件は211から57,059の範囲に分布しています。法人向けは3件しかないので中央値は出しませんが、桁が違うことは見て取れます。
これは「法人向けサイトが劣っている」という話ではありません。顧問契約の検索需要そのものが、個人の相談需要より小さいということです。法人向けサイトで月間数千セッションを目標に置くと、施策の方向が最初からずれます。
| 区分 | 件数 | 月間セッション | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 個人の依頼者向け | 12件 | 211〜57,059 | 検索需要が大きい。分野テーマごとの差が大きい |
| 法人の顧問向け | 3件 | いずれも1,000未満(3桁台) | 母数が3件のため中央値は算出しない。人数は3桁台 |
法人向けサイトの目標は、人数ではなく「会う前に信用を判断してもらう材料が揃っているか」に置くべきです。紹介や既存顧客からの二次接触で見られる場面が多いためです。この場合、必要なのは記事の本数ではなく、体制・実績・料金の考え方・担当者の顔が揃っているページ構成になります。
比較検討中の会社があれば、こう聞いてみてください。「個人依頼向けと法人顧問向けで、目標指標をどう分けて設定しますか」。両方に同じKPIを置く提案が来たら、設計を疑ってよい場面です。
3. 検索には出ているのに、クリックされていない
すでにサイトを持っている事務所から最も多い相談が、これです。「順位は悪くないはずなのに問い合わせが増えない」。この状態は実在します。
当社が計測している士業15サイトのうち、Search Consoleで月間表示1,000回以上という条件を満たしたのは8件でした。この8件を合算すると、クリック45,378回 ÷ 表示4,921,315回 = CTR 0.92%です。表示100回に対してクリックは1回未満、という水準になります。
除外した7件の内訳も書いておきます。Search Consoleにプロパティ自体が無いものが2件、プロパティはあるが計測データが入っていないものが3件、表示1回・表示0回が各1件です。表示0回は「本当に0」ではなく計測が入っていない可能性が高いため、閾値を設けて母集団から外しています。
個別サイトの実測ペア
中央値を指標ごとに並べると、別々のサイトの数字を1社の姿にすり替えることになります。そこで、実在する8サイトの表示・クリック・平均掲載順位をそのまま並べます。
| 月間表示回数 | 月間クリック数 | CTR | 平均掲載順位 |
|---|---|---|---|
| 3,056,863 | 26,391 | 0.86% | 5.4 |
| 675,817 | 7,486 | 1.11% | 6.5 |
| 456,573 | 4,931 | 1.08% | 6.0 |
| 323,300 | 1,689 | 0.52% | 6.9 |
| 261,609 | 2,591 | 0.99% | 6.4 |
| 121,962 | 1,987 | 1.63% | 7.0 |
| 16,880 | 218 | 1.29% | 7.8 |
| 8,311 | 85 | 1.02% | 12.2 |
注意点があります。合算表示4,921,315回のうち、3,056,863回(62%)が1サイトに集中しています。つまり0.92%という数字は、その1サイトのCTRに強く引きずられた値です。「士業サイトのCTRはおよそ1%」といった一般化はできません。ここに出ているのは8つの独立した事務所ではなく、大半が同一事務所の分野別サイトである点も併せて読んでください。
参考として、同じ条件(月間表示1,000回以上)で全業種のサイトを集計すると、CTRは2.96%でした(士業を除く173サイト。いずれも月間表示1,000回以上、業種分類と突合できたサイトのみ)。士業の検索面は、表示に対してクリックが取りにくい環境にあるという読み方になります。
ではどうするか
理由を「ポータルサイトや広告に取られているから」と断定することはしません。当社に士業領域でその裏付けとなる一次データが無いためです。書けるのは、順位を上げる施策と、クリックされる施策は別だということだけです。
具体的には、タイトルと説明文の書き分け、検索結果に出る先頭20文字前後で何を名乗るか、地域と分野の組み合わせをどのページで受けるか。これらは制作時のページ設計とセットで決まります。公開後に文言だけ直す作業ではありません。
発注前の打ち合わせでは、ここを確認しておくと安全です。「公開後に検索順位だけでなく、表示回数とクリック率を分けて見るレポートを出せますか」。順位表だけを提出する運用では、この問題は発見できません。
4. 広告に関するルールは、要件定義の最初に確認する
士業のホームページには、所属する会ごとに広告や表示に関するルールがあります。弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、行政書士で扱いは異なり、同じ資格でも所属する会によって運用が変わることがあります。
この記事では、条文の内容や、書いてよい表現・だめな表現の具体例は書きません。当社は各会の規程原文を一次情報として確認しておらず、他社記事からの孫引きで書けば誤りをそのまま広げることになるためです。
代わりに、進め方だけを提示します。要件定義の初回に「所属会の規程を確認する」という工程を明示的に置いてください。確認する主体は事務所側です。制作会社は、確認結果を受けて表現・構成を設計する側に回ります。
実務的には、次の順序が現実的です。
- サイトに載せたい要素を先に洗い出す(実績、料金、依頼者の声、解決事例、有資格者の経歴など)
- 洗い出した要素ごとに、所属会の規程に照らして掲載可否を事務所側で判断する
- 判断結果を制作会社に共有し、掲載できる要素だけでページ構成を組む
- 掲載可否がグレーな要素は、代替表現を用意しておく
この工程を後回しにすると、デザインが上がってから構成をやり直すことになります。ワイヤーフレームの承認前に終えておくのが安全です。
依頼先候補に投げるとよい質問はこれです。「掲載可否の確認を、どの工程で、誰の担当として組み込みますか」。ここが工程表に入っていない見積りは、後から差分が出ます。
5. 「お客様の声」「解決事例」をどう扱うか
前章と同じ理由で、掲載してよいかどうかの可否判断は書きません。守秘義務と所属会の規程に関わる領域であり、当社の一次記録に判断根拠がないためです。
書けるのは、掲載できる場合にどう設計するかです。声や事例は、置いただけでは読まれません。分野タグで分類し、該当する相談分野のページから辿れる導線を作って初めて機能します。
隣接業種の実例があります。経営コンサルティング会社である株式会社小宮コンサルタンツの制作では、当初のご要望に「コラムやお客様の声などでのタグ付け / SEO対策」が含まれていました。7ヶ月・76ページ・WordPressでの構築です。無形サービス業で、声と事例をタグ設計まで含めて作った例として参考になります。

経営コンサルティング/隣接業種の参考事例/7ヶ月・76ページ
掲載が難しい場合の代替も用意しておきます。依頼者個別の事例ではなく、相談から解決までの流れ、期間の目安、費用の考え方といった「手続きの説明」で信頼を作る構成です。こちらは守秘義務に触れずに厚みを出せます。
比較検討中の会社があれば、こう聞いてみてください。「事例を掲載できない前提でも、同じ分量の信頼材料をどう作りますか」。この問いに構成案で答えられるかどうかで、士業案件の経験値が見えます。
6. 何ページ必要か。費用より先にこれを決める
費用が知りたいという相談は最も多いのですが、ページ数が決まらないと金額は出せません。当社が実際に制作した士業4件のページ数は、以下のとおり大きく振れています。
| 実績 | 区分 | ページ数 | 制作期間 |
|---|---|---|---|
| 辻・本郷 社会保険労務士法人 | コーポレートサイト新規構築 | 4ページ | 4カ月 |
| 結和税理士法人 | コーポレート+採用サイト | 15ページ | 6カ月 |
| 史彩監査法人 | コーポレート+リクルート | 24ページ | 8カ月 |
| 相続センター|辻・本郷 税理士法人 | サービスサイト | 34ページ | 記載なし |
4ページから34ページまで、8倍以上の開きがあります。母数は4件なので中央値は出しません。参考までに、当社の全公開実績で見るとページ数の中央値は27ページ(n=87、数値の記載があるもののみ集計)です。
ページ数を膨らませる最大の変動要因は、有資格者の個人ページをどこまで作るかです。所属人数分の紹介ページを個別に作るのか、一覧の中に略歴を収めるのか。10名規模でも、この判断だけで10ページ以上変わります。
費用の考え方については、工程別の内訳を公開しています。20ページ・デザイン10画面・1フォーム・WordPress・マニュアルとレクチャーありという要件で、3,078,720円(税別)という見積り例です。内訳はディレクション513,120円、ワイヤーフレーム313,600円、デザイン824,000円、コーディング560,000円、WordPress構築772,000円、その他96,000円となっています。より広い母集団での相場はWeb制作の費用相場の記事にまとめています。
新規構築とリニューアルで費用が変わるかという質問もよくいただきます。回答としては、単価そのものはおおむね同様で、対応する業務範囲が異なる場合があるという整理です。既存コンテンツの移行有無、旧サイトからのリダイレクト設計、既存の計測タグの引き継ぎなどが差分になります。リニューアルの進め方も参考にしてください。
他社に見積りを取るときは、次の点を確認してください。「この金額は何ページ・何デザイン画面での前提ですか」「有資格者ページが増えた場合の単価はいくらですか」。ページ単価が示されない見積りは、比較ができません。
7. 制作期間と、着手すべき時期
士業は繁忙期がはっきりしている業種です。確定申告期、決算期、年度替わり。この時期に打ち合わせと原稿確認が重なると、確実に止まります。
当社の士業実績の期間は、4カ月・6カ月・8カ月の3件です(1件は記載なし)。母数が3件なので中央値は出しません。全公開実績で見ると期間の中央値は7カ月(n=95)です。
よくいただく質問への回答としては、20ページ・デザイン10画面・1フォーム・WordPress・マニュアルとレクチャーありという要件で「おおむね5カ月半~8カ月程度」とお答えしています。また新年度公開を目指す場合は「おおむね8月~9月頃からの制作着手」が目安です。
逆算すると、こうなります。4月公開なら8月〜9月着手、10月公開なら2月〜3月着手。確定申告期に要件定義や原稿確認を置かない前提でスケジュールを引くなら、さらに前倒しが必要です。制作全体の工程はWeb制作の流れと期間に詳しく書いています。
発注前の打ち合わせでは、ここを確認しておくと安全です。「こちらの繁忙期を工程表に反映してもらえますか」「確認が止まった場合のリスケジュールはどう扱われますか」。当社の場合は、遅延が発生した際にリスケジュール案を提示し、承認のうえで進行する運用にしています。
8. 実際にあった依頼背景
ここからは、当社の制作実績に記録として残っている発注前の課題を紹介します。想像で書いた課題リストではなく、実際の案件記録の文言です。
更新を自分たちでできるようにしたい
公認会計士の監査法人である史彩監査法人の案件では、発注前の課題として「旧サイトは自社で更新できず、都度業者に依頼し費用がかかっているため、自社内で更新できるようにしたい」「コーポレートサイト、リクルートサイトに抱える課題を解決したい」が記録されています。
さらに当初の課題は6項目に整理されて残っています。「全体1:更新を内製できるようにしたい」「全体2:コーポレートサイトとリクルートサイトで雰囲気が違いすぎる」「リクルートサイト1:冒頭に動画が流れ、募集要項など必要な情報がスムーズに探せない」などです。残る3項目も、掲載内容の切り分け、お知らせ機能の不在、新着情報の発見しにくさといった具体的な指摘でした。
「デザインを新しくしたい」ではなく、運用上の不便が起点になっている点が特徴です。士業のリニューアル相談は、この形が多いと考えています。
グループ内で独立したサイトを立ち上げたい
辻・本郷 社会保険労務士法人の案件では、「辻・本郷 社会保険労務士法人としての独立したコーポレートサイトがないため新規で立ち上げたい」「顧客向けにイメージアップ、信頼性向上に寄与するサイトとしたい」が背景として記録されています。
この案件は4ページ・4カ月で立ち上げています。グループ内での位置づけを明確にすることが目的であれば、大きなサイトである必要はありません。小さく立ち上げて、後から足すという選択が実際に成立しています。ただし、進行中に発生した追加要望は別途お見積りのうえで進行する運用です。あらかじめ含めるページと、後から足すページを分けておくと管理しやすくなります。
比較検討中の会社があれば、こう聞いてみてください。「最小構成で立ち上げて、後からページを足す進め方に対応できますか」。初期構築で全部作ることを前提にした提案しか出てこない場合は、予算の置き方から見直したほうがよい場面です。
9. 士業の制作実績
当社が公開している士業関連の制作実績は4件です。内訳は税理士法人2件、監査法人1件、社会保険労務士法人1件。弁護士事務所の公開実績はありません。前半で紹介した実測データは弁護士・法律事務所として計測しているサイトが中心であり、公開実績とは母集団が異なります。この点は明記しておきます。

税理士法人/コーポレートサイト+採用サイト(ブランディング・採用強化)/6カ月・15ページ・WordPress
結和税理士法人の案件は、ブランディングと採用強化を目的としたコーポレートサイトと採用サイトの制作です。コンテンツ方針として、会社が伝えたい情報と求職者が知りたい情報に共感性・整合性を持たせること、打ち合わせを重ねて会社を理解したうえで顧客・求職者へ伝えたい魅力を明文化することが記録されています。求職者が求める調査結果に基づいて必要なコンテンツを網羅する方針でした。
体制は9名(プロデューサー1/ディレクター1/撮影ディレクター1/設計1/デザイナー2/フロントエンド2/バックエンド1)。撮影・動画・イラストまで含めた対応です。

監査法人(公認会計士)/コーポレートサイト+リクルートサイト(ブランディング・採用強化)/8カ月・24ページ・WordPress
史彩監査法人の案件は、前章で紹介した6項目の課題を起点にしています。目的は採用強化で、定性目標として「①求職者へのイメージアップ ②求職者へ認知拡大 ③顧客への信頼感向上」が設定されました。コンバージョンは「説明会エントリー / 採用エントリー」です。
ユーザーシナリオも記録されています。「監査の仕事に興味を持ち、関連するコラム情報を閲覧する。法人を認知し、採用情報を閲覧する」。コラムを入口にして採用へつなぐ設計が、最初から想定されていました。体制は6名です。

社会保険労務士法人/コーポレートサイト新規構築(ブランディング・認知拡大)/4カ月・4ページ・WordPress
辻・本郷 社会保険労務士法人の案件は、独立したコーポレートサイトを新規で立ち上げた例です。4ページ・4カ月という最小構成ですが、体制は10名(プロデューサー1/ディレクター1/設計1/デザイナー2/フロントエンド3/バックエンド2)を組んでいます。ページ数が少ないことと、設計が簡単であることは別です。

税理士法人/サービスサイト(お問い合わせ増加)/34ページ・WordPress/STUDIO/Shopify
相続センター|辻・本郷 税理士法人の案件は、相続という分野に絞ったサービスサイトです。目的はお問い合わせ増加。34ページで、CMSはWordPress/STUDIO/Shopifyを併用しています。体制は8名で、マーケター1名が入っている点が他の3件と異なります。第1章で述べた「分野を絞ったサイトを別に立てる」設計の実例です。
制作実績の見方について、他社に依頼する場合はここを聞いてください。「同業種の実績が無い場合、代わりに何で判断すればよいですか」。当社の場合、士業実績は4件で、弁護士事務所はありません。件数を盛らずに、近い設計課題を扱った案件で説明できるかが判断材料になります。
10. 採用は、士業サイトの現実的な目的です
士業のホームページというと集客の話になりがちですが、当社の公開実績4件のうち2件は採用強化を目的に含んでいます。有資格者の採用難は、実際に発注の動機になっています。
前章のとおり、史彩監査法人の案件ではコンバージョンが「説明会エントリー / 採用エントリー」に設定されていました。問い合わせフォーム一択ではありません。結和税理士法人の案件も、目的はブランディングと採用強化です。
設計上のポイントは3つあります。ひとつ、コーポレートサイトと採用サイトの雰囲気を揃えるか、意図的に分けるかを先に決めること。史彩監査法人の課題にも「全体2:コーポレートサイトとリクルートサイトで雰囲気が違いすぎる」が挙がっていました。
ふたつ、コラムから採用情報への導線を最初から想定すること。仕事内容に興味を持った段階の人が、そのまま採用情報にたどり着ける構造にします。みっつ、動画やビジュアルの演出が、必要な情報への到達を邪魔していないか。同案件では「リクルートサイト1:冒頭に動画が流れ、募集要項など必要な情報がスムーズに探せない」が課題として挙がっていました。
採用サイト制作の費用|相場と、そもそも「作るべきか」の判断基準https://grow-group.jp/archives/30358/採用サイトの制作を検討している方へ。費用の実勢から、何を作るべきか、何ページ必要か、いつ着手すべきかまで、判断に必要なことを…
採用サイトのコンテンツと作り方|求職者1,030名の調査と実測データで決めるhttps://grow-group.jp/archives/30374/採用サイトに何を載せるべきか。この問いには、勘や慣習ではなく、データで答えられます。 この記事では、2種類のデータを重ねます…依頼先候補に投げるとよい質問はこれです。「採用エントリーをコンバージョンに設定した場合、コーポレート側の記事をどう連携させますか」。採用ページ単体の話しか返ってこない場合、応募の母数は増えにくくなります。
11. 更新を内製化する。CMSとマニュアル
史彩監査法人の課題の1番目が「全体1:更新を内製できるようにしたい」だったように、更新のたびに費用が発生する状態からの脱却は、士業の主要な発注動機です。
当社の場合、制作物の9割方に更新システム(CMS)を搭載しており、WordPressで制作しています。全公開実績で見ると、CMSの記載がある86件のうち79件(92%)がWordPressです。士業4件も全件WordPressを使用しています(相続センターの案件のみ、STUDIO/Shopifyを併用)。
内製化で重要なのは、CMSを入れることそのものではなく引き渡し後に本当に触れるかどうかです。当社では40P前後の独自のマニュアルを作成し、1時間半にわたりレクチャーを行っています。
士業サイトで内製化の効果が大きいのは、次の領域です。
- お知らせ・新着情報:法改正、事務所の体制変更、セミナー告知など更新頻度が高い
- コラム・解説記事:検索からの入口になる。外注すると1本ごとに費用が発生する
- 所属者の一覧:入退所のたびに更新が必要になる
- 取扱分野の追加:分野を増やす際にページを足せる構造にしておく
逆に、トップページの大幅な構成変更やデザインの作り替えは内製に向きません。どこまでを自分たちで触る領域にするかを、要件定義の段階で線引きしておくことをおすすめします。
発注前の打ち合わせでは、ここを確認しておくと安全です。「更新できる範囲と、依頼が必要な範囲を一覧で示してもらえますか」「マニュアルとレクチャーは見積りに含まれていますか」。
12. セキュリティ。依頼者の情報を扱う前提で
士業は守秘義務を負う業種です。問い合わせフォームから依頼内容が送られてくる以上、セキュリティの要求水準は他業種より高くなります。「WordPressは危ないと聞いた」という質問も実際にいただきます。
当社の回答は次のとおりです。WordPressは世界でも日本でも最も利用者の多いCMSであり、「WordPressのデフォルト状態では、ログイン画面やユーザーの割り出しがしやすい状況の場合もございます」。そのうえで、WordPressの技術書籍を発刊しているエンジニアがセキュリティを考慮した要件で納品しており、「当社においてはWordPress納品後の改ざん被害はございません」。
さらに要求水準が高い場合は、「第三者機関におけるOWASP TOP10を基準として診断することも可能です」。情報システム部門から診断を求められた場合の対応としても、実際にご相談をいただいている領域です。
ここは正直に書きます。改ざん被害が無いという記録はあくまで当社の実績としての事実であり、あらゆる要求水準を満たすことを保証するものではありません。事務所として満たすべき基準がある場合は、その基準を要件として先に提示してください。基準に対して何ができるかを回答する形にしたほうが、確実です。
比較検討中の会社があれば、こう聞いてみてください。「フォームから送られた内容は、どこに、どの形で保存されますか」。サーバー内のデータベースに残る設計か、メール転送のみか、外部サービスを経由するか。ここが曖昧なまま公開すると、あとで説明できません。
13. 公開後、何をどう見るか
公開して終わりにしないために、計測の設計を先に決めておきます。当社が計測している士業15サイトはGA4は15件すべてが接続済みでした。一方、Search Console側は月間表示1,000回以上の条件を満たしたのが8件で、残り7件はプロパティが無い、あるいは計測データが入っていない状態です。
つまりアクセス解析は入っているが、検索面の数字は半分程度しか取れていないのが実態でした。第3章で挙げた「順位は出ているのにクリックされていない」という問題は、Search Consoleが入っていなければ発見すらできません。
レポートについては、費用の目安をお伝えしています。レポートを含む運用の場合、「一般的には毎月30,000円ほどをいただいております」。レポートを付けない場合も、「サイト公開の際にはGoogleアナリティクスを導入し、御社で確認いただけるよう共有をいたします」。
Webコンサルティングとして継続する場合は、アクセス解析レポート、改善施策の立案、改善施策の実施、定期報告の打ち合わせという組み立てです。毎期にKPIを策定しながら月次で提供する形をとっています。
士業サイトで最低限見るべき指標は、次の4つだと考えています。
| 指標 | 取得元 | 見る目的 |
|---|---|---|
| 月間セッション | GA4 | そもそも人が来ているか |
| 表示回数とクリック数 | Search Console | 検索面に出ているか、クリックされているか |
| 平均掲載順位 | Search Console | 順位の問題か、クリックの問題かを切り分ける |
| 問い合わせ・エントリー数 | GA4(要設定) | 目的に到達しているか |
他社に依頼する場合はここを聞いてください。「公開時にSearch Consoleも設定し、こちらのアカウントで見られる状態にしてもらえますか」。GA4だけを入れて終わりにする運用は、実測でも15件中2件ありました。
14. 誰が担当し、こちらの負担はどれくらいか
所長が意思決定者であり、同時に実務の中心でもある。士業の発注で最も現実的な制約は、費用ではなく所長の時間です。
当社の一般的なプロジェクトの体制は6名(プロデューサー1/ディレクター1/設計1/デザイン1/コーダー1/WordPressエンジニア1)です。士業4件の実際の体制は、10名/9名/6名/8名でした。
打ち合わせの回数もお伝えしています。各工程で合計13回に及ぶ社内打合せを行い、クライアント側との打ち合わせは10〜15回程度。アジェンダと議事録を用意して進行します。打ち合わせは基本的にZoom等のWeb会議ベースです。
原稿については、すべてを事務所側で用意する必要はありません。当社では取材を通じた原稿対応も可能です。撮影も、スチール写真から動画を活用した撮影まで専任のアートディレクターが担当します。結和税理士法人の案件では、撮影ディレクターを含む体制で、撮影・動画・イラストまで対応しました。
負担を減らす現実的な進め方は、こうです。
- 所長が出るのは要所だけにする:要件定義、方針決定、デザイン最終確認の3回程度に絞る
- 原稿は取材で巻き取る:話した内容を原稿に起こす形にすれば、書く時間はゼロにできます
- 確認担当を1名決める:複数名の意見が並行して入ると、修正回数が増えます
- 繁忙期を工程表に先に書き込む:後から止めるより、最初から避けるほうが総期間は短くなります
発注前の打ち合わせでは、ここを確認しておくと安全です。「こちらが確保すべき時間は、合計で何時間くらいですか」。回数だけでなく、1回あたりの所要時間と事前準備の量まで確認しておくと、見通しが立ちます。
15. 契約・修正・中止の条件
読み手が契約書を読み慣れた職種である以上、条件の書きぶりが曖昧な会社は選ばれません。当社の運用を明示しておきます。
| 項目 | 当社の運用 |
|---|---|
| 契約書 | 当社からドラフトを作成し、リーガルチェックいただく流れが最もスタンダード。電子締結・郵送を選択可 |
| 支払い | 銀行振込・月末締め・翌月払い。100万円を超え長期にわたる案件は着手金をお願いする場合あり(諸条件により調整) |
| 修正 | 各工程に3回ほどの修正期間を設定。工程戻りや過度な修正は別途見積りとなる場合あり |
| 追加要望 | 進行中に発生した場合は別途見積りを提示し、確認・承認のうえ進行 |
| 遅延 | リスケジュール案を提示し、承認のうえ進行 |
| 中止 | 進行中のキャンセルはご遠慮いただいているが、やむを得ない場合は工程消化分のみ精算 |
士業案件で特に効くのは、修正回数の定義です。デザインの好みで往復すると、回数はすぐ消化します。修正依頼を1名に集約し、指摘を一度にまとめる運用にすると、同じ回数でも到達点が変わります。
他社に見積りを取るときは、次の点を確認してください。「修正は何回まで含まれ、何を超えると追加費用になりますか」「工程戻りの定義を文書で示してもらえますか」。ここが口頭合意のまま進むと、後半で必ず揉めます。
16. 作る側に倒れる条件
ここまで、判断を事務所側に委ねた論点がいくつかありました。最後に、当社の実測と実績で裏付けのある「作ったほうがよい条件」を明示します。
- 取扱分野で個人の相談を取りたい場合:分野を絞ったサイトのほうが月間セッションの中央値は高く出ています(5,027/n=11 対 1,952/n=4)。母数は小さいので傾向としての読み方ですが、方向性は一貫しています。
- 有資格者を採用したい場合:当社の公開実績4件のうち2件が採用強化を目的に含みます。説明会エントリー・採用エントリーをコンバージョンに設計した実例があります。
- 更新のたびに費用が出ている場合:内製化は実際の発注動機として記録に残っています。CMSとマニュアル、レクチャーをセットにすれば、運用費の構造そのものを変えられます。
- グループ内で独立した位置づけを作りたい場合:4ページ・4カ月で立ち上げた実例があります。大きな投資でなくても成立します。
- すでにサイトがあり、検索には出ているのに問い合わせが増えていない場合:Search Consoleが入っていなければ、原因の切り分け自体ができていない可能性があります。まず計測を入れるところから着手できます。
逆に、いま急がなくてよい条件も書いておきます。所属会の規程確認が終わっていない段階で、掲載内容を前提にした設計に着手すること。これは順序を守ったほうが、結果的に早く終わります。
まとめ:発注前に手元で決めておく6つ
この記事の内容を、事務所側で先に決めておくべき事項として並べ直します。制作会社に相談する前に、この6つに仮でも答えを出しておくと、初回の打ち合わせから見積りの精度が変わります。
| 決めること | 判断の目安 |
|---|---|
| 誰に向けるか | 個人依頼向けか法人顧問向けか。両方なら目標指標を分ける |
| サイトを分けるか | まず1本で計測を入れ、需要を見てから分野サイトを足す順序が現実的 |
| 掲載可否の確認担当 | 所属会の規程確認は事務所側の工程。ワイヤーフレーム承認前に終える |
| 有資格者ページの粒度 | 個別ページか一覧内か。ページ数と見積りが最も動く箇所 |
| 公開希望時期 | 4月公開なら8月〜9月着手が目安。繁忙期を工程表に先に書き込む |
| 更新の担当範囲 | 自分たちで触る範囲と依頼する範囲を線引きし、マニュアルとレクチャーを見積りに含める |
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本記事の実測データは、当社が計測しているサイトを対象に2026年5月上旬時点の30日間(=月間)で集計したものです。Search Consoleの数値は月間表示1,000回以上の8サイトに限定し、プロパティが無い2件、計測データが入っていない3件、表示1回・0回の2件を除外しています。制作実績の数値は、公開している制作実績ページに記載のある値をそのまま用いています。
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