製造業のホームページを作り直すべきか。作るなら何に金を使い、誰に頼むのか。
この記事は、その判断材料だけを置きます。読み物ではありません。答えるのは3つです。
- 自社の現在地はどこか——製造業68サイトの実測を物差しとして出します
- 今、発注すべきでないのはどんなときか——当てはまるなら、お金を使わない方がいい条件を書きます
- 誰に、いくらで頼むか——相見積もりの全社に投げるべき3つの質問と、見積の実勢(中央値320万円)を出します
材料は2つです。ひとつはGrowGroupが運用を預かる452サイトのうち製造業68サイトの実測。もうひとつは、私たちが製造業の企業へ出した初回ヒアリング提案書9社分・523スライドを、全部読み返して数えた結果です。
ただし、その前に書いておくべきことがあります。この数字には限界があります。そこから始めます。
目次
- 1 この記事の数字の出どころと、その限界
- 2 まず、3つの数字だけ測る
- 3 どちらの型か:来た人が帰っているのか、そもそも来ていないのか
- 4 リニューアルしない方がいい条件
- 5 製造業のサイトで、実際にクリックされているページ
- 6 製造業は、何で検索されているか
- 7 アクセスがあるのに商談にならない。この罠に、当社もはまっている
- 8 CVを測っていない会社が、3社に1社ある
- 9 当社が製造業9社に出した提案書を、全部数えた
- 10 製造業がサイトを作り直す理由の1位は、問い合わせではない
- 11 いくらかかるか
- 12 誰に頼むか:相見積もりの全社に、同じ3つを投げる
- 13 稟議に書く7行
- 14 よくある質問
- 15 まとめ:この記事で決められること
この記事の数字の出どころと、その限界
先に4つ、正直に書きます。ここを飛ばして読むと、数字を過信します。
1. これは「製造業の平均」ではありません。68サイトは、私たちが制作・運用に関与しているサイトです。当社の顧客の分布であって、製造業の母集団ではありません。御社が四分位のどこに入るかを見ても、それは「GrowGroupの顧客の中でどのあたりか」でしかない。業界標準として社内資料に転記しないでください。使い道は、物差しとして自分の位置を眺めるところまでです。
2. 提案書9社の集計が測っているのは、顧客の実態ではありません。この9社は私たちに相談してきた企業——つまり、すでに自社サイトに不満がある企業です。しかも課題を判定したのは当社の営業です。だから「8/9社が◯◯だった」という数字は、製造業の8割がそうだという意味ではなく、当社の診断がそう出た再現率です。以降、提案書の話はすべて「当社が9社に出した提案書ではこう書いてきた」という形でしか書きません。
3. ページとクエリの分類は、最大が「その他」です。後で出す集計は、URLと検索語を機械的に分類したものです。分類できなかった「その他」が最大のかたまりで、クリックの相当部分がそこに入ります。だから「読まれているのは◯◯だけ」とは言えません。
4. 数字の期間と母数はバラバラです。ベンチマークは68サイト・2026年5月6日取得の直近30日。ページとクエリの集計は33サイト・6月14日〜7月14日。費用はBoardの見積データで直近12ヶ月・全業種。別々のデータなので、掛け合わせてROIを計算することはできません。この記事でもしません。
まず、3つの数字だけ測る
「うちのサイトは古いらしい」を、「どこがどれだけ下か」に変えます。測るのは3つだけです。セッション、検索表示回数、検索クリック数。GA4とサーチコンソールを開けば出ます。担当者に出させて構いません。
全452サイトの月間中央値を100としたときの、メーカー(モノづくり)の水準。6指標すべてで上回る
出典:GrowGroup管理サイトのGA4/サーチコンソール実測(2026年5月6日取得・直近30日・月間の中央値)。メーカーはGA4 54サイト/GSC 35サイト、全体はGA4 366サイト/GSC 228サイト。掲載順位と直帰率は「小さいほど良い」指標のため、反転して指数化しています。
まず中央値の比較です。製造業は全指標で全452サイトの平均を上回っていました。「BtoBだからWebは無駄」は、少なくとも当社の顧客の中では成り立っていません。
| 指標(月間・中央値) | メーカー | 全452サイト |
|---|---|---|
| セッション | 1,649 | 1,395 |
| ページビュー | 4,342 | 3,205 |
| 平均滞在時間 | 124秒 | 111.1秒 |
| 直帰率 | 49.8% | 50.4% |
| 検索表示回数 | 10,496 | 8,499 |
| 検索クリック数 | 464 | 416 |
ただ、中央値は「真ん中の1社」でしかありません。自分の位置を見るには、四分位が要ります。
| 指標(月間) | 下位25% | 中央値 | 上位25% |
|---|---|---|---|
| セッション | 478 | 1,649 | 4,565 |
| 検索表示回数 | 818 | 10,496 | 28,866 |
| 検索クリック数 | 54 | 464 | 1,559 |
この章で決めること:GA4で直近30日のセッション、サーチコンソールで表示回数とクリック数を出し、上の表のどこに入るか3つとも丸で囲む。それだけです。
なお、平均掲載順位はこの記事では使いません。GSCの平均順位は、指名検索やロングテールの比率で機械的に動きます。母集団の構成が違えば数字も動くので、投資判断の材料になりません。
どちらの型か:来た人が帰っているのか、そもそも来ていないのか
ここが背骨です。投資先が正反対に分かれます。
私たちが製造業の企業へ出す提案書には、その会社のサイトのGA4実測を載せています。営業トークではなく、相手の数字です。そこに並んでいたのがこういう値でした。
| 提案書に載っていた実測 | 値 |
|---|---|
| 直帰率 | 76.5〜80.1% |
| 平均滞在時間 | 23〜37秒 |
| PV/セッション | 1.7 |
| 新規ユーザー率 | 89.2% |
製造業の中央値は直帰率49.8%・滞在124秒・PV/セッション約2.6です。提案を受けるほど困っていた会社は、そこから大きく離れていました。
ただし、この76.5〜80.1%を物差しにはしないでください。「提案を受けるほど悪かった会社はこのくらいだった」という参考値にすぎません。閾値として「直帰70%を超えたら危険」のような線を引ける根拠は、手元にありません。
逆のパターンもありました。月800ユーザーしかいないのに、直帰率21.8%・PV/セッション4.7。この会社への診断は正反対になります。来た人はちゃんと読んでいる。問題は、来る人が少ないこと。
私たちが提案書で使う比喩があります。読み返した11件のうち10件で使っていた定型の言い回しです。「穴の開いたバケツ」。バケツに穴が開いているとき、蛇口をひねっても水は溜まらない。集客の前に受け皿を直す、という順序の話です。定型句なので、これ自体が何かの証拠ではありません。ただ、順序としては正しいと考えています。
この章で決めること:GA4で直帰率・平均エンゲージメント時間・PV/セッションを出し、どちらかを紙に書く。
- 【受け皿型】製造業の中央値(直帰49.8%・滞在124秒)より明確に悪い → 集客に金を使うと素通りが増えるだけ。受け皿が先
- 【流入不足型】直帰・滞在は中央値並みかそれ以上なのに、セッションが下位25%(478)近辺 → 集客に投資すれば素直に効く
リニューアルしない方がいい条件
先に、当社の売上が減る話を書きます。次の3つのどれかに当てはまるなら、今フルリニューアルを発注しないでください。
1. CVを計測していない。後述しますが、製造業のGA4実測57サイトのうち19サイトはキーイベントが未設定でした。3社に1社です。測っていないなら、まず計測を入れて1ヶ月の現状値を取る。数万円の作業で済みます。効果を測れない状態で320万円を投じると、次のリニューアルでも同じ議論をします。
2. 「誰に何を伝えるか」が社内で決まっておらず、決める会議の予定もない。制作は買えますが、決定は買えません。ここが決まらないまま発注すると、要件定義が長引くか、当たり障りのない会社案内型に着地します。
3. 直したい対象が特定のページ1〜2枚。当社の実績では、サイト修正の中央値は5万円/件、LP新規制作は中央値57万円です。フルリニューアルの帯(225万〜493万円)に乗せる必要はありません。
この章で決めること:3つのうち当てはまるものを先に潰す。潰してから見積を取る。
製造業のサイトで、実際にクリックされているページ
「一式リニューアル」で全ページを等価に扱うと、金の使い道を決められません。製造業33サイトのサーチコンソールを実際に取って、URLを型ごとに集計しました。
最大は分類できなかった「その他」。棒=月間クリック数、括弧内=CTRとそのページを持つ社数
出典:GrowGroupが管理する製造業サイト33件のサーチコンソール実測(2026年6月14日〜7月14日)。URLを機械的に型へ分類しており、個別URL・顧客名は保持していません。★最大は分類できなかった「その他」です。★「社数が少ない=空白=機会」とは言えません(技術・設備は5社しか持ちませんが、CTR1.51%=最下位帯です)。
最大は「その他」です。28,092クリック。機械的に分類したので、ここに入った分の中身は分かりません。だから「読まれているのはトップと製品だけ」とは言えません。言えるのはここまでです。
- クリックが立っているのは製品・商品(27,227)、ブログ・用語(21,405)、トップページ(10,800)、資料ダウンロード(8,326)
- お問い合わせページ(106クリック)とニュース(890クリック)は、検索経由ではほとんどクリックされていない
- トップページはCTR7.27%で最も高く、33社すべてが持っている
この章で決めること:見積を取る前に「制作工数の過半をトップ・製品ページ・資料ダウンロードに寄せる」と社内方針を1行決める。ニュースとお問い合わせページの作り込みには金を使わないと決める。
「5社しか持っていない」は、機会なのか
この表を見て、私は最初こう考えました。技術・設備・強みのページを持っているのは33社中5社、事例ページは7社しかない。製造業の最大の武器なのに空白だ。ここに作れば勝てる。
間違いでした。同じ表がそれを否定しています。
技術・設備・強みのCTRは1.51%で、13分類の最下位帯です。事例・ソリューションも2.72%。トップ7.27%・資料DL4.69%・製品3.08%を下回ります。持っている5社でも、検索の入口としては効いていません。
「誰も作っていないから機会がある」のか、「作っても効かないから誰も作っていない」のか。このデータでは区別できません。加えて、URLの機械分類なので、技術情報が会社案内の配下に統合されていて検出できていない可能性も否定できません。
正直に書くと、「空白だから作れ」という結論は、たまたま当社の受注額が増える方向と一致します。データが支持していないのにその結論を書けば、それはポジショントークです。書きません。
この章で決めること:技術ページ・事例ページを作るなら、「検索から人を連れてくるページ」としては期待しない。目的を「発注先探しで来た人が比較検討する材料」に限定して判断する。その効果は、本記事のデータでは証明できていません。
製造業は、何で検索されているか
同じ33サイトの検索クエリを、型ごとに集計しました。
最大は分類できなかった「その他」。棒=月間クリック数。※薄い灰=表示回数が少なく参考値にならないもの
出典:GrowGroupが管理する製造業サイト33件のサーチコンソール実測(2026年6月14日〜7月14日・33サイトの合計)。★最大は分類できなかった「その他」です。★「価格・費用」(表示209)「資料・カタログ」(表示317)は母数が小さく、CTRは参考値になりません。★これは製造業自身のサイトの実測であり、世の中でそう検索されていないという意味ではありません。
ここでも最大は「その他」(33,087クリック)です。分類できた分は全体の一部にすぎません。
そのうえで、目を引く数字が1つあります。「発注先を探して検索」(メーカー・加工・受託・OEM・依頼など)のCTRは14.55%。情報収集系の2.74%の5倍以上です。意図が濃いのだから当然とも言えます。
ただし、量が小さい。ここを先に書きます。クリック1,869は33サイト・1ヶ月の合計です。1サイトあたり月57クリック。全表示100万回超の中の1%強です。後述するCVR中央値1.61%を掛ければ、月1件に届きません。
つまり「発注先探しのクエリを取りにいく」だけでは、320万円の根拠になりません。読者が必ずやるこの掛け算を、こちらから先に出しておきます。
もうひとつ、目を引く数字。「型番・品番で検索」は29,193回表示されて、クリックは144回(0.49%)です。表示はされているのに選ばれていない。ただし理由は分かりません。掲載順位が低いのか、検索結果の抜粋だけで用が足りているのか、通販サイトに取られているのか。このデータでは特定できません。「既存客の確認行動だから」と説明したくなりますが、それは憶測です。
「価格・費用で検索」は表示209回しかありません。ここから「製造業は価格で検索されない」と言いたくなります。言えません。この33サイトは製造業自身のサイトです。価格ページを持っていないから表示が立たないだけかもしれない。供給側の欠落を、需要側の不在にすり替えることはできません。
この章で決めること:サーチコンソールでクエリを直近3ヶ月エクスポートし、上位100件だけを「発注先探し/情報収集/型番/社名/その他」に手で仕分ける。発注先探し系のクリックが月何件あるかを数える。ゼロに近ければ、そこがリニューアルの目的になります。
アクセスがあるのに商談にならない。この罠に、当社もはまっている
提案書の現状分析で、複数社に同じ診断を書いてきました。「〜とは」系の一般ワードで上位を取り、大量に流入している。ところが直帰率90〜100%、平均滞在0〜7秒。
先ほどの集計でも、ブログ・コラム・用語ページは118万回表示・21,405クリックと量は最大級なのに、CTRは1.80%と低い水準でした。
ここで、自分の話を書きます。grow-group.jp のオーガニック流入の主力キーワードは「フォント ttf」「ヘッダーとは」「デバッグ 違い」です。月2,000近い流入があります。そのほとんどは、Web制作を発注する人ではありません。他社に指摘してきた構造に、当社がはまっています。
この章で決めること:自社の流入上位10キーワードを並べ、そのうち「発注を検討している人が打つ言葉」が何個あるか数える。0〜1個なら、月間流入が何千あってもKPIから外す。制作会社の提案に「PV◯倍」が成果指標として書かれていたら、発注先探し系クエリのクリック数とCV件数に置き換えて再提出させる。
CVを測っていない会社が、3社に1社ある
製造業のGA4実測57サイトのうち、キーイベント(CV)を計測していたのは38サイトでした。19サイトは未設定です。
測っている38サイトの数字はこうでした。
- CV中央値:月39件
- CVR中央値:1.61%(CV÷セッション)
この数字を目標にしないでください。CVの定義は各社バラバラです。問い合わせだけを数えている会社、資料ダウンロードや電話を含む会社が混ざっています。加えてこの38社は「計測する程度に成熟した会社」ですから、そもそも偏っています。
この数字が言えるのは1つだけです。測っている会社は、月39件前後という粒度で議論ができている。測っていなければ、その議論の土俵にも上がれません。
この章で決めること:GA4でキーイベントの設定有無を今すぐ確認する。未設定なら、リニューアルより先に計測を入れて1ヶ月の現状値を取る。設定済みなら、自社にとってのCVが何か(問い合わせ/資料DL/電話)を1行で定義して社内共有する。目標は他社比較ではなく、自社の現状値からの改善幅で置く。
当社が製造業9社に出した提案書を、全部数えた
初回ヒアリング提案書11件・523スライドを読み返し、製造業・産業領域と確認できた9件を数えました。
緑=来たあとの問題/橙=運用・体制の問題/灰=そもそも来ない問題。「来ない」は9社中3社にすぎない
出典:GrowGroupが製造業・産業領域の企業へ提出した初回ヒアリング提案書9件の実地集計(2026年7月時点)。全11件・523スライドを読み、業種が特定できた9件を母数としています。顧客名・業種別の内訳は非公開。
繰り返しますが、これは「製造業に共通する課題」ではありません。当社に相談してきた9社に対して、当社の営業がそう診断した回数です。測っているのは当社の診断の再現率です。そのうえで、御社に当てはまるかどうかを見てください。
| 当社が9社の提案書に書いた課題 | 該当 |
|---|---|
| 「誰に何を伝えるか」が未定義 | 8/9社 |
| サイトが古い(5年・6年・10年・15年未更新) | 8/9社 |
| 情報が整理されておらず、目的の情報に辿り着けない | 8/9社 |
| 回遊が浅い(読まれる前に離脱) | 7/9社 |
| 採用力の低下(働くイメージが伝わらない) | 7/9社 |
| 自社で更新できない/外注コストが膨らむ | 6/9社 |
| 指名検索頼み(社名でしか見つからない) | 3/9社 |
目を引くのは最後の行です。「そもそも見つけてもらえない」は3社だけでした。当社が診断していた問題の大半は、見つけてもらえた後にありました。
そして最多が「誰に何を伝えるかが未定義」(8社)。技術情報も設備一覧も実績も、載ってはいる。ただ、それが誰に向けた何なのかが決まっていない。
提案書に繰り返し書いてきた診断の言い回しがあります。「情報はあるが、整理されていないことで価値が減衰している状態」。
そしてもうひとつ、「BtoB企業特有の理解コスト」。製造業の商材は身近ではありません。一目で価値が伝わらない。BtoCなら「安い」「おいしい」が一瞬で伝わりますが、精密加工の技術力は写真1枚では伝わりません。
この章で決めること:自社のトップページを開いて、「このページは、誰の、どんな困りごとに向けたものか」を一文で言ってみる。言えなければ、訪問者にも分かりません。そしてこれは、お金では解決しません。誰に何を売りたいかを決められるのは御社だけだからです。
正直に書いておくこと:9社中9社に提案していたもの
数えていて、決まりが悪かった事実もあります。WordPressの導入、撮影・動画・取材、「3つの価値」というフレーム——この3つは9社中9社に提案していました。
ただしこれは定型スライド由来です。「毎回提案している」は事実ですが、「毎回その企業のために判断した」わけではありません。クライアントごとに作っていたのは、3つの課題への集約(8/9)と、GA4・SEOの現状分析(7/9)です。そこが提案書の実質でした。
この区別は、御社が他社の提案書を読むときにも使えます。どこが定型で、どこが自社のために書かれたか。ページを色分けすれば分かります。
製造業がサイトを作り直す理由の1位は、問い合わせではない
ここからは公開情報です。grow-group.jp で公開している制作実績263件のうち、業種が製造業系の33件について、登録している「目的」を集計しました。
公開実績33件の目的(複数該当あり)。緑=伝わっていないことの解決/橙=引き合いの獲得
出典:grow-group.jp の制作実績263件のうち、業種が製造業系の33件を集計(2026年7月17日時点)。1件が複数の目的を持つため合計は33を超えます。実績はすべて grow-group.jp/works/ で公開しています。
| 目的(1件が複数該当) | 件数 |
|---|---|
| ブランディング | 22件 |
| 採用強化 | 11件 |
| 認知拡大 | 10件 |
| お問い合わせ増加 | 8件 |
| 集客 | 4件 |
| 海外への多言語化 | 4件 |
「お問い合わせ増加」は33件中8件しかありません。1位はブランディング22件、2位は採用強化11件。実際に発注された案件が、そう記録されています。
これは前章の提案書の集計とも符合します。採用力の低下は7/9社に書いていました。求人票が弱いという話ではなく、働くイメージが伝わらず母集団が形成できないという診断です。「誰に何を伝えるか」が決まっていないから、求職者にも伝わらない。根が同じです。
投資判断としては、ここが効きます。新規の引き合いだけを理由にすると、320万円の判断は重い。実際、発注先探し系のクエリは1サイト月57クリックでした。しかし採用が同時に解けるなら、話が変わります。求人媒体に年間いくら払っているか、1人採るのにいくらかかっているかと並べたとき、費用の見え方は変わります。
ただし、正直に書きます。当社は採用サイトの提案で「できること」と「難しいこと」を対比した表を必ず入れています。そして「母集団形成」と「短期での大量応募」は、難しいこと側に書いています。サイトを作れば応募が集まる、とは言えないからです。サイトができるのは、検討に乗るところまでです。
この章で決めること:リニューアルの目的を1つに絞って紙に書く。「問い合わせも採用もブランディングも」は、優先順位を決めていないのと同じです。
いくらかかるか
当社の受注実績です。受注時の見積金額の中央値と四分位(直近12ヶ月・クレンジング後)。
| 種別 | 中央値 | ボリュームゾーン(25〜75%) | 件数 |
|---|---|---|---|
| フルサイト構築・リニューアル | 320万円 | 225万〜493万円 | 175件 |
| LP(ランディングページ)新規制作 | 57万円 | 54万〜60万円 | 34件 |
| 保守・運用 | 16万円/件 | — | — |
| サイト修正などの運用作業 | 5万円/件 | — | — |
これは全業種の数字です。Boardの受注データには業種の分類がなく、製造業だけを切り出すことができません。「製造業の相場」として使わないでください。
参考までに、当社が提案書で示している価格帯の考え方も書いておきます。テンプレート制作は50万円以下・2週間〜1ヶ月。オリジナル制作は300万円前後・6ヶ月前後。戦略から作る場合は500万円前後・8ヶ月前後。当社は3番目に位置しています。
この章で決めること:金額の帯を1本だけ選ぶ。そして、その帯に対応する期間(2週間/6ヶ月/8ヶ月)を役員会の議題に載せる。
誰に頼むか:相見積もりの全社に、同じ3つを投げる
ここが、この記事でいちばん使える部分だと思います。
当社の提案書9件を数えていて、繰り返していた型が3つありました。手前味噌に聞こえますが、これは当社を選ぶ基準ではなく、提案書一般を見比べる基準として書きます。相見積もりの全社に、同じ質問を投げてください。
質問1:「うちのサイトの現在の数字を出せますか。セッション、検索表示回数、クリック数、CV件数。」
当社が9社に出した提案書のうち、GA4とSEOの現状分析を載せたのは7件でした。ここがクライアント固有の作業=提案の実質です。「御社のサイトは分かりにくい」は感想です。「直帰率80%・滞在23秒」は事実です。提案の前に実際に測っていない会社は、想像で提案しています。
質問2:「今回、できないこと・難しいことは何ですか。」
当社は提案書で自社の売り物を3つ挙げたうえで、その3つを1枚ずつ否定します。見た目を変えただけでは成果は出ない。訪問者が少なければ成果は出ない。運用できなければ成果は出ない、と。できないことを言わない提案書は、後で揉めます。
質問3:「課題を3つに絞ると、何ですか。」
当社は9件中8件で「弊社が考える3つの課題」に集約していました。10個並べる提案書は、優先順位を決めていないのと同じです。何から手をつけるかを決めるのが提案です。
加えて2つ。「CVの定義は何ですか」「更新は自社でできますか」。
この章で決めること:上の3問を、そのまま候補全社にメールで投げる。回答が定型スライドだけの会社、課題を10個並べる会社、できないことを書かない会社を落とす。
稟議に書く7行
ここまでの章で決めたことを、そのまま並べれば稟議になります。新しい数字は1つも要りません。
- 現在地:セッション◯/検索表示◯/クリック◯(製造業68サイト中央値=1,649/10,496/464 に対してどこか)
- 現状CV件数と、CVの定義(未計測ならその事実)
- 型:受け皿型か、流入不足型か
- 「やらない条件」に当てはまらないことの確認
- 投資を寄せるページ:トップ/製品/資料ダウンロード
- 目的を1つ:ブランディングか、採用か、問い合わせか
- 金額の帯と期間、および今回できないこと3行
7行目の「できないこと」を必ず入れてください。制作会社に要求した基準を、自分の稟議にも適用するということです。
よくある質問
製造業でも、ホームページから引き合いは来ますか?
当社が管理する製造業33サイトの実測では、発注先を探す検索からのクリックは1サイトあたり月57クリックでした。CVR中央値1.61%を掛ければ月1件に届きません。「検索から新規の引き合いを取る」だけを目的にすると、費用に見合いません。実際、公開している製造業の実績33件でも、目的の1位はブランディング(22件)で、お問い合わせ増加は8件でした。
まず何から始めればいいですか?
GA4で直帰率と滞在時間、サーチコンソールでクリック数を見ることです。無料で、今日できます。そのうえで「受け皿型」か「流入不足型」かを決める。ここを決めずに発注すると、半分の確率で逆の投資をします。
費用はいくら見ておけばいいですか?
当社の受注時の見積で、フルサイトは中央値320万円、25〜75%が225万〜493万円です(175件・全業種)。製造業だけの数字は出せません。ただし、直したいのが1〜2ページなら5万円/件の修正で足ります。何をすべきかが決まる前に、金額から入らないでください。
SEOに強い制作会社に頼めば解決しますか?
SEOは「もっと人を連れてくる」打ち手です。直帰率80%・滞在23秒の状態でそれをやると、素通りする人が増えます。当社自身、月2,000流入がありながらリードになっていません。流入数を成果指標にしている提案は、CV件数に置き換えて再提出させてください。
「うちには載せるネタがない」のですが
当社が9社に書いてきた診断は逆でした。「情報はあるが、整理されていないことで価値が減衰している状態」——これが最も頻繁に書いた言い回しです。ネタがないのではなく、誰に向けた何なのかが決まっていない、という診断が8/9社でした。ただしこれは当社の診断の再現率であって、御社がそうだという意味ではありません。確かめてください。
なぜ制作会社が、自社の提案書の中身まで公開するのですか?
製造業のWebについて語られていることの多くが、実測に基づいていないからです。私たち自身、8年前に書いた原稿が社内に残っていました。そこには「製造業は同族経営の企業が多く、取引先も先代からの古い付き合いが多い」といった、確かめていない決めつけが並んでいました。今回データを取ったら、その前提は誤りでした。間違っていたのは、業種への思い込みのほうでした。
まとめ:この記事で決められること
- 現在地:製造業68サイトの月間中央値はセッション1,649/検索表示10,496/クリック464。下位25%は478/818/54。自社がどこかを3数字で確定する
- 型:直帰・滞在が中央値より明確に悪ければ受け皿型。中央値並みなのにセッションが少なければ流入不足型。投資先が正反対になる
- やらない条件:CVを測っていない/誰に何を伝えるかが決まっていない/直したいのが1〜2ページ。どれかに当たるなら、今は発注しない
- 金の使い先:クリックが立っているのはトップ・製品・資料ダウンロード。お問い合わせページとニュースの作り込みには使わない
- 目的は1つに絞る:公開実績33件の1位はブランディング22件、次いで採用11件。お問い合わせ増加は8件だけ
- 費用:受注時の見積でフルサイト中央値320万円・225万〜493万円(175件・全業種。製造業だけの切り出しは不可)
- 誰に頼むか:全社に同じ3問を投げる。①うちの数字を出せるか ②できないことは何か ③課題を3つに絞ると何か
最後に、この記事の限界をもう一度だけ書きます。68サイトは当社の顧客です。9社の提案書は当社の営業が書いたものです。業界の真実ではありません。御社が自分の数字を測って、自分で確かめるための物差しとして使ってください。
そのうえで、「受け皿型か流入不足型か」の判定が自社だけでは出せない——そこだけが、私たちにご相談いただく価値がある部分だと思います。御社のGA4とサーチコンソールを一緒に見て、68サイトの中でどこに位置しているかをお伝えします。その場で見積は出しません。それは、課題が3つに絞れてからの話です。
費用の内訳と、リニューアルの判断基準は、それぞれ別の記事で詳しく書いています。
Web制作の費用相場2026|142件の受注データで見る本当の中央値https://grow-group.jp/archives/30188/「Web制作って結局いくらかかるの?」 この質問に対して、ほとんどの記事が「30万〜300万円」「案件によります」と答えます…
ホームページリニューアルのタイミングと費用|データで見る判断基準【2026年版】https://grow-group.jp/archives/30175/「そろそろホームページをリニューアルすべきだろうか」——そう感じていても、何を基準に、いつ、いくらで判断すればいいのかが分か…GA4やサーチコンソールが「渡されても読まれない」問題については、こちらに書きました。







