GrowGroupでは、Webサイトを納品するとき、必ずGA4(Googleアナリティクス4)とサーチコンソール、そしてヒートマップなどのアクセス解析ツールを設定して、お客様にお渡ししています。計測が漏れていないかを確認し、コンバージョンの計測も設定し、権限もお渡しする。ここまでが納品です。
ところが、しばらく経ってお客様とお話しすると、こう言われることが少なくありません。「一度も開いていません」。
これが、私たちがアクセス解析ツール「グローレポータ」を作ることになった発端です。社内の工数を削るためではありません。渡したものが、使われていなかったからです。
この記事では、GA4レポートが読まれない理由をどう捉え、それに対してどんなツールを設計したのかを、意図的にやらなかったことと、まだ測れていないことまで含めてお話しします。ツールを買っていただくかどうかに関係なく、「AIにGA4レポートを書かせようとしている方」には、そのまま持ち帰れる論点が入っているはずです。
目次
- 1 渡しても、使われない ── 発端は「顧客が読めない」ことだった
- 2 GA4レポートが読まれない、3つの構造
- 3 その前に:スプレッドシートの痕跡と、5回の作り直し
- 4 目的:「見る → 改善する → 評価する」を1画面で完結させる
- 5 最重要の設計:本サイトのデータが主役、業界文脈は補助情報
- 6 この原則は、AIを使うすべての会社に効きます
- 7 AIは、放っておくと目的から逸れていく
- 8 やらないと決めたこと
- 9 壊れたときに、60秒で戻れるようにする
- 10 成果として書けること、書けないこと
- 11 「渡して終わり」にしないために、私たちがやっていること
- 12 御社の業務に、そのまま移せること
- 13 よくある質問
- 14 まとめ:渡すだけでは、使われない
渡しても、使われない ── 発端は「顧客が読めない」ことだった
グローレポータの開発のきっかけを一言でいうと、「GA4やサーチコンソールや解析ツールを見ても、お客様自身の学習ハードルが高い」——これに尽きます。
ここは、制作会社としてきちんと認めておかなければならない点です。私たちは、計測環境を「入れて渡す」ところまでしかやっていませんでした。ツールは正しく動いています。数字も溜まっています。権限もお渡ししています。技術的には、納品物として何の不備もありません。
それでも使われないなら、渡し方の問題ではなく、渡したものの問題です。
GA4は、専門家にとっては非常によくできた道具です。設計思想が一貫していて、どんな切り口でも掘れる。しかしその万能さは、「何を見ればいいか分かっている人」を前提にして成立しています。中小企業のWeb担当者の多くは、Web解析が本業ではありません。総務や広報や営業と兼任で、月に数時間だけサイトを見る。その人にとってGA4は、操作を覚える前に「何を見るべきか」を自分で決めなければならない道具です。
学習ハードルが高いというのは、操作が難しいという意味ではありません。「問いを自分で立てられる人でないと、答えが出てこない」という意味です。この構造がある限り、研修をしても、マニュアルを付けても、月次で説明会をしても、根本は変わりません。
これは、Hajik(ハジク/問い合わせフォームのスパム対策ツール)が生まれた経緯とまったく同じ系譜です。私たちの自社ツールで商品化に至ったものは、どちらも「納品したあとに、お客様の現場で実際に困っていること」から始まっています。社内の効率化から始まったツールとは、出発点が違います。
GA4レポートが読まれない、3つの構造
「読めない」をもう少し分解します。私たちが納品後の現場で見てきた限り、GA4レポートが読まれない理由は、おおむね次の3つに整理できます。
| 読まれない構造 | 現場で起きていること |
|---|---|
| ①「見る」で終わっていて、次の行動に繋がらない | セッション数が前月比で増えた/減った、までは分かる。しかし「だから何をするか」が出てこない。数字を確認する作業だけが月次のルーティンとして残り、サイトは何も変わらない |
| ② ツールが分かれていて、話が繋がらない | 集客の状況はサーチコンソール、サイト内の動きはGA4、実際の閲覧の様子はヒートマップ。1つの「なぜ」を追うのに3つの画面を行き来する必要があり、それができるのは慣れた人だけ |
| ③ 改善したあと、効果を確かめる場所がない | 改善の実施はタスク管理ツールや口頭、効果測定は解析ツール。両者が別の場所にあるため、「あの改善に意味があったのか」を誰も検証しないまま次の月が来る |
この3つに共通しているのは、レポートの精度の問題ではないということです。もっと正確な数字を、もっときれいなグラフで出しても、①②③はどれも解消しません。足りないのは情報ではなく、情報から行動までの地続きの道です。
だから私たちは、「GA4のデータをきれいに可視化するツール」を作らないことにしました。それは、すでに世の中にたくさんあります。そして、たくさんあるのに読まれていません。
その前に:スプレッドシートの痕跡と、5回の作り直し
設計の話に入る前に、このツールの来歴について、分かっていることと分かっていないことを正直に書いておきます。
コードの中には、Googleスプレッドシート時代の痕跡が残っています。
| 残っている痕跡 | そこから見えること |
|---|---|
| 「スプレッドシート関連の処理はv5.13.3で完全に削除」という明記 | かつて、集計結果をシートに書き出す機能が本体に組み込まれていた |
| サイト別のセッション数・コンバージョン数を月次で追記していくシートの列構成が、今もコードに残っている | 「サイトごとの数字を、毎月、行を足して記録していく」運用が実在した |
| サイト登録が完了したときに走る関数の名前が、今もスプレッドシート時代の名残のまま(コード中に「関数名はレガシー」と自ら注記) | 機能は入れ替わったが、当時の骨格の上に今のツールが乗っている |
ここで、線を引いておきます。「スプレッドシートで手集計していた時代があり、そこから移行した」という輪郭は確かに見えます。しかし、それが開発の発端だったと書いた記録は、社内のどこにもありません。だからこの記事では「シートの手集計が辛かったから作った」とは書きません。痕跡から逆算したもっともらしい物語は、事実ではないからです。発端は、あくまで「お客様が読めない」ことです。
もう1つ、事実として書けることがあります。グローレポータは、リポジトリごと5回作り直されています。2025年10月に最初のもの、11月に2つめ、2026年2月に3つめと4つめ、そして2026年6月から現行の5つめ。現行リポジトリの最初のコミットが、すでにバージョン5.0です。v1からv4までの成長の記録は、この場所にはありません。
作り直しの多さは、隠す話ではないと考えています。AIを使った開発では、作り直すコストが劇的に下がりました。設計を間違えたと気づいたときに、継ぎ足して延命するのではなく、土台から作り直すという選択が現実的に取れる。5回という数字は、その都度「これは違う」と判断できていたということでもあります。ただし、作り直すたびに前の世代の文脈は落ちます。速さの代償は、コードではなく記録のほうに出る——それがこのツールから得た実感です。
目的:「見る → 改善する → 評価する」を1画面で完結させる
グローレポータの目的は、要件定義書に明記されています。GA4とサーチコンソールのデータを一元表示し、AIによる分析・改善提案・効果測定を自動化する、日本語のWebアナリティクスSaaS。対象は中小企業のWeb担当者、マーケティング代行会社、コンサルタント。そしてコア価値は「見る → 改善する → 評価する」を1画面で完結させること。
この一行は、機能一覧より雄弁です。「GA4レポートを見るためのツールではない」と宣言しているからです。
前章で挙げた3つの構造に、そのまま対応しています。
- 「見る」——GA4とサーチコンソールを1つの画面にまとめる。ツールを行き来しなくても、集客から着地、その後の動きまでが1つの流れとして読める
- 「改善する」——数字を見せて終わりにせず、AIが改善提案まで出す。担当者が問いを自分で立てられなくても、次の行動の候補がその場に出ている状態にする
- 「評価する」——実施した改善を記録し、その後の数字と結びつける。「あれに意味があったのか」を、同じ画面の中で確かめられるようにする
この3つを別々のツールでやると、必ず途切れます。途切れた瞬間に、Web担当者は「見る」だけを月次のルーティンとして残し、あとは何もしなくなる。それが、私たちが納品後に何度も見てきた光景でした。
そして、日本語であること、対象を中小企業のWeb担当者に絞ったことも、この目的から出ています。「専門家でなくても読めること」が要件である以上、専門家向けの語彙と多機能さは、そのままでは負債になります。
最重要の設計:本サイトのデータが主役、業界文脈は補助情報
設計文書の中で、いちばん強い言葉で書かれている原則がこれです。本サイトのデータが主役、業界文脈は補助情報。
この原則は、AIにレポートを書かせようとした人なら、必ず一度はぶつかる問題への回答です。
AIに分析を書かせると、放っておけば必ずこう言い出します。「このサイトの直帰率は、業界平均より高いですね」。
一見、賢そうに見えます。比較していて、数字が出ていて、分析らしい体裁になっている。レポートとして提出しても、たぶん誰も文句を言いません。しかし、これは有害です。そして有害であることが、読み手にはほぼ気づけません。数字が出ているぶん、正しく見えてしまうからです。
そこでグローレポータでは、AIにやらせてはいけないことを、原則として明文化しています。
| 禁じている振る舞い | なぜ禁じているか |
|---|---|
| 業界平均を「目標」として扱う | 平均に追いつくことは、その会社の事業の目的ではない。事業の狙いも規模も商圏も顧客も違うのに、平均に合わせにいくのは思考停止でしかない。平均は「目指す場所」ではなく「置かれた場所を知る補助線」でしかない |
| 生の統計値をそのまま出す | 数字を並べるのは分析ではない。読み手が知りたいのは数値そのものではなく、その数値が何を意味していて、次に何をすべきかである。統計値をそのまま出すと、読み手にもう一度「解釈」という宿題が戻ってくる。それこそが、GA4が読まれない理由だった |
| 責任を外部に転嫁する | 「市況が悪いため」「季節要因のため」「業界全体が下がっているため」で終わる提案に価値はない。それは分析ではなく、言い訳の生成である。自分たちで動かせる要素に話を戻さないレポートは、読んでも何も起きない |
| できていない点にばかり寄る | 指摘だけを並べても人は動かない。動かない提案は、出していないのと同じ。うまくいっている箇所を伸ばす選択肢を、必ず候補に残す |
この原則が示しているのは、「業界の相場をAIに教えれば、提案の質が上がる」という直感が、そのままでは間違っているということです。
相場を知ったAIは、相場に寄せた提案を出すようになります。それは「このサイトをどう良くするか」ではなく「このサイトを、どうやって平均に近づけるか」です。まったく別の問いにすり替わっています。しかも、すり替わったことに誰も気づきません。むしろ「業界平均と比較してくれる、賢いAI」として歓迎されてしまう。
さらに厄介なのは、平均より上だったときです。「業界平均より良い数値です」と書かれたレポートは、読み手を安心させます。安心した読み手は、何も改善しません。比較は、下回れば言い訳を生み、上回れば油断を生む。どちらに転んでも、行動には繋がらないのです。
だからグローレポータの設計では、業界の文脈をAIに与えることはあるが、それはあくまで補助情報であり、主役は目の前のサイトのデータであるという順序を、原則として固定しています。文章の中で先に来るのも、結論を決めるのも、常にそのサイト自身の数字です。
この原則は、AIを使うすべての会社に効きます
ここは、グローレポータを導入されるかどうかに関係なく、持ち帰っていただきたい話です。
社内でAIに何かを分析させるとき、同じ現象が必ず起きます。営業データを分析させれば「同業他社の平均受注率と比べて」と言い出し、採用データを分析させれば「一般的な応募単価の相場では」と言い出し、コストを分析させれば「業界標準の水準では」と言い出す。AIは、比較対象を与えられると、そちらを基準にして語りたがります。それが最も「分析らしく」見える形式だからです。
これに対して私たちが取っている対処は、次の3段階です。
- 禁止事項を、原則として文書に固定する。「今回はこう書いて」ではなく、そのAIが出力する全ての文章に共通してかかる決まりとして書き出す。原則の形にしていないルールは、案件ごとに揺れて、いずれ守られなくなります
- 与えるデータに順位を付ける。「主役はこれ、補助はこれ」を明示する。AIに複数のデータを渡すと、AIは全部を平等に扱おうとします。どれが主役かは、渡す側が決めなければ決まりません
- 守られているかを、心がけではなく仕組みで確かめる。プロンプトに「業界平均を目標にしないでください」と書くのは5秒で終わります。しかし、書いたことが守られているかどうかは、まったく別の問題です
AIの出力の品質は、祈るものではなく、検査するものです。この一点だけでも社内に持ち帰っていただければ、AIレポートが「それっぽいけど誰も動かない文章」になるのを、かなりの確率で防げます。
AIは、放っておくと目的から逸れていく
開発中の記録に、設計の考え方がよく表れている場面があります。
ページの遷移を分析する画面を作っていたときのことです。出来上がってきた画面に対して、社内から「目的がずれてきている気がする」という指摘が入りました。この画面の目的は、特定のページの前に、どんなページを見ていたかを知ることである。流入元のチャネルを知りたいわけでもないし、離脱数を知りたいわけでもない——と。
これは、AIが機能を盛ろうとするのを、人が目的に引き戻している場面です。
AIに「ページ遷移の分析画面を作って」と頼むと、AIは気を利かせます。流入チャネルの内訳も出しましょう、離脱率も並べましょう、デバイス別も添えましょう、と関連しそうな指標を次々に足してくる。どれも間違っていません。だから厄介なのです。
間違っていない機能が足されていくと、画面は「何を知るための画面なのか分からない画面」になります。これは、まさにGA4の標準レポートを見て「情報はあるのに何も分からない」と感じる、あの感覚です。情報が足りないのではなく、目的が薄まっている。読めないツールを作らないために作っているのに、放っておけば、読めないツールに戻っていくのです。
AIを使った開発で人が担うべき仕事は、コードを書くことではなく「目的の番人であること」に移っています。AIは目的を守りません。AIが守るのは指示です。目的から逸れたことに気づけるのは、目的を持っている人間だけです。
やらないと決めたこと
機能紹介には絶対に出てこないので、意図的にやらなかったことを書きます。ここが設計の背骨です。
- テストフレームワークを入れない。設計文書に、テスト環境を構成しないことが明記されています。速度を優先した割り切りです(後述するとおり、これは保留事項でもあります)
- 無料プランでは、AIによる生成を提供しない。結果として、無料プランの利用者はAIの改善提案という中心的な価値を受け取れません。これを「仕様として許容する」と、文書にはっきり書いています。全員に全部を届けようとして、有料プランの価値まで薄めることをしない、という判断です
- 迷ったときにだけ、上位のAIモデルを呼ぶ。1段目で判定が付いたものを、上位モデルでもう一度判定し直すことはしない。グレーゾーンにだけコストを払います
- 過去の基準値を、さかのぼって再計算しない。計算方法を変えたときに、過去の数字を新方式で塗り替えることをしない。当時の数字は当時のまま残します。過去が書き換わるツールは、比較の土台として信用できなくなるからです
- データの置き場所を、二重に持たない。スプレッドシートに書き出す機能を作り、そして完全に削除しました。データがシートにもデータベースにもあると、必ずズレます。ズレた瞬間に、解析ツールは信用を失います
同じ発想は、指標の定義にも効かせています。セッション、ユーザー、直帰率、コンバージョン率といった指標の定義を1つのファイルに集約し、そこから画面側にもサーバー側にも自動で配っています。「同じ指標なのに、画面によって数字が違う」という、解析ツールが最も信頼を失う事故を、注意力ではなく構造で防ぐためです。
「どこが正なのか」を1つに決める。これはツール開発に限らず、社内の情報が散らかっているあらゆる場面に当てはまる判断です。作ったものを捨てるのは苦しいですが、二重管理を抱え続けるほうが、長い目で見て確実に高くつきます。
壊れたときに、60秒で戻れるようにする
目的に紐づく実装を、1つだけ書きます。「1画面で完結させる」ツールは、止まると全部が止まるからです。しかも使うのは、専門家ではないお客様です。エラー画面が出た時点で、その人はもう二度と開いてくれないかもしれません。
採用しているのは、2つの組み合わせです。
- フェイルオープン——新しい仕組みが失敗したとき、画面を止めるのではなく、従来どおりの動きに落ちる。使う人から見て「エラーが出た」ではなく「気の利いた部分が今回は出なかっただけ」で済む
- 機能フラグ——新しい仕組みを、コードを戻さずにスイッチ1つで切れる。異常に気づいてから、およそ60秒で元の状態に戻せます
この2つは、「テストを書かない」という割り切りとセットで理解する必要があります。事前に全部を検証するのではなく、壊れたときに素早く戻れることに投資している。どちらが正しいという話ではなく、どちらに賭けたかという設計判断です。
ただし、この賭けには限界があります。データの構造そのものを作り変えるような変更は、スイッチ1つでは戻せません。実際、設計文書には「この移行のロールバックは、バックアップからの復元が唯一の手段」と、逃げ道がないことがそのまま書かれています。60秒で戻れるのは、戻れるように作った範囲だけです。そこも含めて正直に書いておきます。
成果として書けること、書けないこと
ここも正直に線を引きます。
数字で書けることは、1つだけです。私たちが自社の運用で使っている場面で、クローズミーティング(サイト公開後の締めの打ち合わせ)の資料作成が、1件あたり1時間から10分になりました。月に2〜3件です。
ただし、この数字の扱いには注釈が要ります。社内では、この短縮について「これはSaaSなので、社内の工数削減の文脈とは関係ない」と整理しています。
この一言に、グローレポータの位置づけがよく表れています。私たちは自社ツールを9本作っていますが、その大半は社内の業務効率化のためのもので、成果は削減時間で測ります。グローレポータは違います。これは、お客様のために作って、お客様に売っている商品です。私たちの工数が減ったのは副産物であって、評価軸ではありません。同じ「自社開発ツール」でも、社内DXと商品では、成果の測り方が根本から違います。この区別を曖昧にしたまま「自社ツールで月◯時間削減」と語る会社は、たぶん両方とも正確には測っていません。
そして、書けないことのほうが、はるかに多いです。
| 書けなかったこと | 理由 |
|---|---|
| 利用社数・売上・継続率・お客様の反応 | 記述した文書が1件もありません。測っていないものを、書くわけにはいきません |
| AIの改善提案の品質を検証したA/Bテストの数値 | 社内でA/Bテストは実施しましたが、文書自身が「メトリクスはモックデータ」と注記しており、さらに検証対象だった知識の注入が、実質的に何も注入していない状態だったと明記されています。加えて、人手による最終評価は採点フォームが空欄のままで、判定が付いていません。検証として成立していないので、数値は引用しません |
| 導入による効果の定量値 | 同上。測定していません |
ついでに、現時点の保留事項もそのまま書いておきます。売っているプロダクトの記事としては珍しいと思いますが、「渡しても読まれない」の話を書いておいて、都合の悪い現状だけ伏せるのは筋が通らないからです。
- テストコードは1本も書かれていません。前述のとおり意図的な割り切りですが、割り切りであることに変わりはありません
- カード決済は未実装です。請求まわりは業務システムとの連携で回しており、決済機能そのものには着手していません
- AIに渡す改善ナレッジの蓄積は、提供開始の時点でゼロ件から始まりました。運用しながら積み上げていく前提の仕組みです
これらを書くのは、謙遜のためではありません。「AIで速く作れる」ことの実像を、正確にお伝えするためです。速く作れるのは本当です。しかしその速さは、テストの省略と、5回の作り直しを伴っていました。それが、私たちが実際に払ったコストです。
「渡して終わり」にしないために、私たちがやっていること
発端が「渡しても使われない」だったので、渡し方そのものも作り直しました。
グローレポータは、外部のお客様に有償でご提供している実運用のプロダクトです。独自ドメインで動き、サポート窓口があり、利用規約があり、契約の更新や解約もきちんと仕組みとして持っています。社内の便利ツールではありません。
そのうえで、Webサイトの制作を納品する際には、アカウントを発行してお渡しする運用にしています。また、サイトの引き渡しと、引き取りの両方ができる仕組みも入れています。制作会社が伴走する期間と、お客様が自走する期間の切り替えが、実務では必ず発生するからです。解析環境が「誰のものか」を、そのつど付け替えられる状態にしておく。これも「渡して終わりにしない」ための設計です。
御社の業務に、そのまま移せること
グローレポータをご検討いただくかどうかに関係なく、この記事から持ち帰れる論点を整理します。
- 「渡した」と「使われている」は、まったく別のことです。ツールを導入した、権限を渡した、マニュアルを作った——そこまでは提供側の仕事の完了であって、受け手の課題の解決ではありません。社内システムでも、まったく同じことが起きています
- 読めない原因は、たいてい「操作の難しさ」ではなく「問いを立てる難しさ」です。研修を足す前に、「何を見ればいいか」がその画面の側から提示されているかを確認してください
- AIに業界の相場を教える前に、「相場を目標にしない」と決める。比較は、下回れば言い訳を生み、上回れば油断を生みます。そして決めたことが守られているかは、心がけではなく仕組みで確かめる
- AIを使うとき、人の仕事は「目的の番人」になる。AIは指示を守りますが、目的は守りません。逸れたことに気づけるのは、目的を持っている人だけです
- データの正を1つに決める。二重管理は、必ずズレて、必ず信用を失います。作ったものを捨ててでも1つにする
- 成果の測り方を、対象によって使い分ける。社内の効率化は削減時間で測る。お客様に届ける商品は、削減時間では測らない。混ぜると、どちらも測れなくなります
よくある質問
GA4の標準レポートやLooker Studioでは足りませんか?
「数字を見る」だけなら足ります。グローレポータが目的にしているのは、その先です。GA4レポートを見たあとに改善が実行され、その効果が測られるところまでを、1画面で地続きにすること。裏を返せば、社内に解析を読める人がいて、改善まで回っているなら、既存のツールで十分です。私たちが向き合っているのは、そうでない現場のほうです。
AIの改善提案は、業界平均と比較してくれますか?
意図的に、そうしていません。設計の原則が「本サイトのデータが主役、業界文脈は補助情報」だからです。業界平均を目標として扱うこと、生の統計値をそのまま出すこと、外部要因に責任を転嫁することは、AIに対して明確に禁じています。理由は「平均に追いつくことは、御社の事業の目的ではない」から。数値が見えると、その数値が目標になってしまいます。
AIの改善提案は、本当に使えますか?
正直に申し上げると、提案の質を定量的に検証した結果を、対外的に出せる形ではまだ持っていません。社内でA/Bテストを実施しましたが、本文に書いたとおり、検証として成立していない状態のまま終わっています。ですので「数値で証明できます」とは申し上げません。言えるのは設計思想までです——業界平均を目標にさせない、生の統計値で終わらせない、そして最終判断は人がする。AIは、人が反応できる材料を用意する係だと考えています。
社内にWeb解析に詳しい人がいなくても使えますか?
そこが出発点です。このツールは「GA4を読める人が、もっと速く読むため」ではなく、「GA4を読めない人が、次にやることを決められるため」に作っています。対象を中小企業のWeb担当者・マーケティング代行会社・コンサルタントに絞っているのも、日本語のツールとして作っているのも、同じ理由です。
まず何から始めればいいですか?
ツール選び以前に、「先月のGA4レポートを見て、何を改善したか」を思い出せるかを確認してみてください。思い出せないなら、レポートの精度を上げても状況は変わりません。見ることと改善することを繋ぐのが先です。グローレポータの導入をご検討の場合も、まずはその現状をお聞かせいただくところから始めます。
まとめ:渡すだけでは、使われない
グローレポータは、GA4とサーチコンソールのデータを1画面に統合し、AIが分析・改善提案・効果測定までを担うアクセス解析SaaSです。目的ははっきりしています。「見る → 改善する → 評価する」を1画面で完結させること。
そして、このツールが生まれた理由も、同じくらいはっきりしています。私たちは納品時に必ず解析環境をお渡ししていましたが、お客様自身が読むには学習ハードルが高く、使われていませんでした。渡した側の仕事は終わっていても、お客様の課題は何も解決していなかった。だから、読めるものを作りました。
その設計の中心にあるのが、「本サイトのデータが主役、業界文脈は補助情報」という原則です。AIにレポートを書かせると、必ず「業界平均より低いですね」と言い出します。それをやらせないための決まりを、明文化して固定しています。これは、社内でAIに何かを分析させようとしている、すべての会社に効く話です。
「GA4レポートは出しているが、何も変わっていない」「解析ツールは入っているが、誰も開いていない」「そもそも何を改善すべきか分からない」——そうした課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。グローレポータの導入相談も、自社サイトの改善のご相談も、同じ窓口で承っています。ツールを売る立場からではなく、自分たちで作り、自分たちのお客様に渡しながら直してきた立場からご提案します。ご相談・お見積りはこちら






