皆さんChat GPT使いこなしていますか?
私はデザイナーとしてWebサイトのワイヤーフレームを作成し、顧客へコンテンツ提案やディレクターとwebサイトの仕様をチェックしております。
その際に良し悪しの判断材料として必要となってくるのは、Webサイトを届けたいユーザー層の共通認識です。共通認識のためにペルソナやカスタマージャーニーマップを作成することがあります。
しかし、ペルソナやカスタマージャーニーマップは正解が無いもの。様々なアンケートサイトを探ったり、記事を閲覧していては、デザイナーとしての業務が圧迫してしまいます。
僕と同じように、これらを作成する時間やコストが掛けられない方にぜひ見ていただきたい記事となります。
今回の記事ではAI(人工知能)というビッグデータを用いることで、より適切なペルソナやカスタマージャーニーマップを作成する方法をご紹介します。更に、chromeの拡張機能を合わせることでより簡単に作成できる方法も掲載しますのでぜひ応用してみてください。
目次
ChatGPTとは
ChatGPTというAIチャットサービスは、ユーザーが任意のトピックについて自由に質問をすると、AIが生成した回答例を返してくれ、その精度の高さから世界中で話題を集めています。実際に利用した経験のある方なら、その人間らしい対話スタイルに驚いたのではないでしょうか。
ChatGPTはインターネット上の膨大な情報を学習しているため間違えのない、普遍的な回答を出力してくれます。なのでペルソナやカスタマージャーニーマップのターゲットがニッチ過ぎると出力される文章に違和感があったり、回答をしてくれない可能性もあるのでご注意ください。あくまでも蓄積されたビッグデータから最適な出力を行うAIなのでペルソナやカスタマージャーニーマップが正解なものとは限らないことを念頭に置いていただけると幸いです。
本記事の主旨は、ChatGPTがどのようにペルソナやカスタマージャーニーマップが作成できるかを紹介し、ネット検索による情報収集の時間の短縮やコストの削減に繋がればと思い記述しております。
ChatGPTを使ったユーザーインタビュー
なぜユーザーインタビューから行うのか
AIは入力した情報が多ければ多いほど、より適切な回答を出力してくれます。
今回は人事担当者のペルソナとカスタマージャーニーマップを作成していくのですが、『人事担当者のペルソナを作成してください』と端的な命令文をChat GPTに入力しても「あってもなくても同じような成果物」「実際のユーザーとなんだか違う気がする」と感じるクオリティの低い出力結果が出てしまいます。
これはユーザー層はしっかり理解できているのに、「なぜ、その行動をするのか?」「どういう悩みを持っているのか」というユーザーの心理や行動をChatGPTが把握できていないことが原因です。
ユーザーインタビューを行うことでユーザーを理解し把握することが大切なのですが、実際にターゲットユーザーに会ってインタビューしていてはコストと時間がかかるでしょう。しかし、ユーザーインタビューもChatGPTの利用で済ますことが可能です。
ユーザーインタビューの実施
まず、ChatGPTにインタビューする方法ですがChatGPTそのものがターゲットとするユーザーのように振る舞わなければなりません。欲を言ってしまえば1人にインタビューをしても情報不足となってしまうため、3人くらいにインタビューを行いたいです。
そこでChatGPTに以下のようなプロンプトで3人のターゲットユーザーになりきってもらいます。
入力文章 あなたは20人規模の会社の人事担当3人(Aさん、Bさん、Cさん)として私からのアンケートに答えてください |
出力結果としてはChatGPTが3人分としてインタビューに答えてくれることになりました。
それでは早速、インタビューの方を開始していきます。主に行ったインタビュー内容は以下のようなプロンプトです。
入力文章 【質問】 普段どんなお仕事をされているのか教えてください 【質問】 現在持っている悩みを教えて下さい。 【質問】 一日のうちで最も困難な業務内容は何ですか? 【質問】 一日のうちで最も時間を消費する活動は何ですか? 【質問】 この問題を解決するために、取り組んでいることはありますか? 【質問】 今後、どうなったら仕事をする上で障壁無く出来ると思いますか? |
このようにAIにどのように回答してほしいのかのフォーマットを入力文章として用意してあげると、そのフォーマットに沿って出力してくれます。
回答結果としてはAさん,Bさん,Cさん共に、似ている回答が無く各々が持っている「悩み」「取り組み」「目標」を上げてくれたので情報収集としては上出来です。
それではこの箇条書きになっている回答結果を文章としてまとめていく作業を行います。この作業もChatGPTにお願いしてしまいましょう。
入力文章 ありがとうございます。 Aさん,Bさん,Cさん毎に回答をまとめてください |
いかがでしょうか、ユーザーインタビューの内容が端的にまとめられて出力されています。今回提供した質問内容はターゲットに合わせて適宜変えていただいても構いません。より情報として知りたい内容を質問してみるのが良いでしょう。
ChatGPTを使ったペルソナ作成
ペルソナ作成の実施
先ほど作成したユーザーインタビューを元にペルソナを作成していきます。まずはChatGPTにインタビュー内容を覚えてもらうことから始めました。
以下のような入力文章でChatGPTは記憶することが可能です。
入力文章 あなたは3人分のインタビューを記憶できますか? |
すると出力結果からChatGPTは3人分のインタビュー内容を覚えていることが伺えます。ChatGPTは膨大な情報は覚えられませんが少量であれば記憶することが可能なのです。
次に以下のような入力文章でペルソナを作成してもらいます。
入力文章 Aさん、Bさん、Cさんの情報を集約し1人のペルソナを出力してください。 ペルソナの項目は「基本情報(名前 / 年齢 / 職業 / 就労年数)」「仕事のパターン」「仕事上の価値観」「仕事上の性格」「ライフスタイル」「仕事で抱える課題」「人生で 達成したい目標」で各300字~400字で出力してください。 |
すると出力結果からChatGPTにインタビューした回答に沿ったペルソナを書き出してくれました。
書き出されたペルソナから見えるインサイトは「ターゲットユーザーは人事担当として幅広い業務を担当しており、採用業務、従業員の福利厚生や研修・育成プログラム、評価制度の運用や人事労務管理全般がその中心となっており、マルチタスク担っている」「仕事での課題は多岐に渡るが、解決策を見つけるために積極的に取り組んでる。しかし、マルチタスクである問題は解消されていない」ということが伺えます。
このようにターゲットユーザーがどのような仕事をしていて何に悩んでいるのかが明白になっていく所がペルソナの面白いところです。
ChatGPTでペルソナ作成をしてわかったこと
ChatGPTでペルソナを作成する際に気づいたことは、ChatGPTとの意思疎通が綿密に行われなければ適正なペルソナが作られない点です。ターゲットユーザーの属性や特徴を理解し、それに基づくペルソナ作成がChatGPTには求められますが、要件があいまいであったり、明確でない場合には、必要な情報や要素を抜けや漏れなくペルソナに取り入れることが難しいと感じました。
インタビューをせずにペルソナ作成を行うと全く異なるペルソナが作成されるので気になる方は試してみてください。
また、ペルソナ作成においてはリアリティと信憑性が重要です。事前にインタビューを行うことで、ChatGPTがより具体的なユーザーイメージを持ちやすくなり、適切なペルソナを作成することが可能になります。
作成したペルソナからCJM(カスタマージャーニーマップ) を作成
CJM(カスタマージャーニーマップ)作成の実施
それでは次にCJM(カスタマージャーニーマップ)を作成していきます。カスタマージャーニーマップを作成する際に大事なことはどのような形式で出力してほしいか、しっかりとChatGPTに依頼をしなければなりません。
カスタマージャーニーマップは、ユーザーがサービスもしくはサイトを見つける前からお問い合わせまでのフローを表したマップです。ChatGPTは基本文章ベースで出力してくれるので、どういうフローを辿っているのか判断が付きづらい出力結果になってしまいます。なのでカスタマージャーニーマップを作成してもらう際はテーブル形式で出力するようにお願いすることでフロー図として読み取りやすくなります。
テーブル形式で出力してもらい際の注意点ですが「列の項目」と「行の項目」を指定してあげることでフローとして更に違和感のない最適なCJM(カスタマージャーニーマップ)が出力可能です。
入力する構文としては以下のような細かい指示をしてあげることが大切になります。
入力文章 命令: 以下の制約条件と入力文をもとに最高の回答を出力してください。 制約条件: 入力: 出力: |
こちらの構文は深津式プロンプト・システムと呼ばれており、Note社主催のセミナー「あなたの仕事が劇的に変わる!?チャットAI使いこなし最前線」で深津さんから紹介された革新的なプロンプト・システムです。
ChatGPTに対して、どの文章が「命令文で制約文で入力文なのか」はっきりとわかりやすい文章にすることで入力文章の要望を抜けもれなく叶えた出力文章になりやすくなります。
出力結果としては以下のような文章が出てきます。
出力されたテーブル項目の解説
潜在(気づき)
潜在層とよばれる、まだ課題を解決する方法に気づいていない状況で具体的なサービスイメージも持っていません。そのため、インターネットで情報を検索する際に、より漠然としたキーワードで検索する傾向があります。
出力結果だと検索キーワード欄には「人事管理ツール」で検索していると出力されていますが、実際は「人事管理ツール メリット」や「人事業務負担 軽減」等のナレッジブログにランディングしそうなキーワードがより潜在(気づき)には望ましいかなと考えていますが、人事管理ツールについてある程度知識を得た状態のカスタマージャーニーマップと考えれば問題は無いです。
僕らwebサイト提供者から考える具体的な潜在層に向けた提案としては、作成するサイトにナレッジブログを記述できるページを提案します。投稿していくべきナレッジブログのタイトルは「人事管理ツール導入の5大メリット:業務効率化の秘訣を解説」「“なぜ人事管理ツールは必要か:人事業務負担軽減のための最適解」のような潜在層に刺さりクリックしたくなるようなタイトルを提案します。
顕在(情報収集)
ペルソナの持つ課題に則した、特定の課題解決ツールに興味関心があり、必要なサービスがイメージ化しているユーザーを指します。そのため、顕在のユーザーは、潜在よりも具体的なキーワードを使用して検索する傾向があります。
出力したカスタマージャーニーマップによると検索キーワード欄の「人事管理ツール 比較」「人事管理ツール 評判」から人事管理ツールの導入を確定していることが伺えます。よってランディングページとしては外部サイトの比較サイト等から人事管理ツールのホームページ(トップページ)にランディングすることが伺えます。
人事管理ツールのようなSaas系統のサイトだと広告や外部サイトからトップページにランディングすることが多いので、トップページは離脱のされにくいコンテンツ設計が大切になります。
人事管理ツールのようなBtoB向けの顕在層は、決済者の承認等でお問い合わせまでのハードルが高く、様々な情報をユーザーに提供することでコンバージョンに繋がります。
僕らwebサイト提供者から考える具体的な潜在層に向けた提案としては、「機能紹介ページ」「特徴ページ」といった競合他社と比較できるページを用意し「価格ページ」「FAQページ」といった決済者やユーザーの上長に稟議を持っていきやすくする情報を提供するサイトを提案していきます。
検討
こちらは名前の通り、特定のツールを導入検討しているフェーズになります。ユーザーがツールを導入した際の具体的なストーリーを考えている状態ですので、私たちwebサイト提供者から考える具体的な検討層に向けた提案としては、「導入事例」「導入の流れ」「サポートについて」といったページを提供を考えています。
サービス導入したいけど導入後が不透明だとお問い合わせまでの壁になってしまうので、事例や導入の流れ等で訴求するとよいでしょう。
商談
商談フェーズはwebサイトの主に「お問い合わせ」「資料ダウンロード」といったユーザーが情報を書き込身を行い送信するまでの流れとなります。ここまでユーザーをナーチャリングしたのにも関わらず離脱されてしまってはもったいないので、僕らは「お問い合わせページ」や「資料ダウンロードページ」の最適解を日々話し合いを行い、実際にAnalyticsの数値分析やClarityと呼ばれるヒートマップを用いて離脱のされにくいページを追いかけています。
より簡単にユーザーインタビュー、ペルソナ、カスタマージャーニーマップを作成する方法
ここからはおまけのコンテンツとなります。
僕が作成した入力構文をそのままコピー、ペーストしたら簡単に「ユーザーインタビュー・ペルソナ・カスタマージャーニーマップ」を作成することが出来ますが、構文を覚えておかなければ毎回このブログを見に来なければいけない必要が出てきます。時間・コストを削減するためにプロンプトテンプレートを提供させていただいているのにもかかわらず、このブログを再訪問するために検索している時間が増えていては本末転倒なのでChatGPTの中に構文を保存できるChrome拡張機能をご紹介します。
※ご紹介しているツールは、弊社が開発したものではなく、第三者が開発したツールです。したがって、弊社はそのツールに関して責任を負うことができません。弊社は、そのツールの正確性、信頼性、安全性について保証することはできません。お客様がそのツールを使用する際には、自己責任において行っていただく必要があります。なお、弊社はお客様の利便性のためにツールを紹介しているものであり、それに関連する問題や損害については一切の責任を負いません。ご理解いただきますようお願い申し上げます。
①ChatGPT プロンプトアプリエディタをダウンロードする
こちらがChatGPTに構文を保存できるChrome拡張機能です。
ダウンロードはこちら
※このプロダクトはGoogle Chrome拡張機能(プラグイン)です。動作にあたっては最新のGoogle Chromeが必要となります。
ChatGPT プロンプトアプリエディタはプロンプト文章をGUI形式の「プロンプトアプリ」に置き換えることでワンボタンで保存した構文を呼び出しができます。テキストエディタからプロンプトをコピーする手間がなくなるメリットがあります。
インストールが完了したら早速ChatGPTを開いてみましょう。ChatGPTを開いたら以下のように入力するスペースにいろんなUIが追加されているのを確認してください。
②紹介した構文をGUIアプリに変換する
早速、構文をGUIアプリに変換する作業に入っていきます。まずは新しく追加されたUIの「マイアプリ」を開いてください。「ねこ語変換アプリ」と書かれた項目があると思うのでクリックすると以下のような画面になります。
この黄色のテキストボックスを以下の構文に置き換えてください。
書き換え文章 {{title=インタビューに答えます}} 【質問】 現在持っている悩みを教えて下さい。 【質問】 一日のうちで最も困難な業務内容は何ですか? 【質問】 一日のうちで最も時間を消費する活動は何ですか? 【質問】 この問題を解決するために、取り組んでいることはありますか? 【質問】 今後、どうなったら仕事をする上で障壁無く出来ると思いますか? {{インタビュー= あなたは20人規模の会社の人事担当3人(Aさん、Bさん、Cさん)として私からのアンケートに答えてください}} |
このように黄色塗りの上に黒文字で「インタビューに答えます。」の文章が。豆電球のアイコンの横に「入力された質問内容に適したインタビューを回答します。」の文章が。インタビューの中に「あなたは20人規模の会社の人事担当3人(Aさん、Bさん、Cさん)として私からのアンケートに答えてください」の文章が書かれた画面になったら成功です。
③作成したGUIアプリを保存する
②の状態ではまだ保存されていないため、「マイアプリ」をクリックし、「現在のデータを保存」ボタンを選択してください。
するとポップアップで以下のような画面が出てくると思うので、「OK」をクリックすると保存されます。
④インタビューもカスタマージャーニーマップも同じ方法で保存
2つ目以降のGUIアプリを作成する際は、新規作成が出来ないため③で保存したインタビューアプリを書き換えて、「別名で保存」をする必要があります。
まずはインタビューのGUIアプリ作成の構文から掲載していきます。
書き換え文章 {{依頼文章= Aさん、Bさん、Cさんの情報を集約し1人のペルソナを出力してください。 ペルソナの項目は「基本情報(名前 / 年齢 / 職業 / 就労年数)」「仕事のパターン」「仕事上の価値観」「仕事上の性格」「ライフスタイル」「仕事で抱える課題」「人生で 達成したい目標」で各300字~400字で出力してください。}} |
こちらをコピーペーストして保存を行ってください。なお保存する際は必ず③で作成したアプリ名と別名で保存してください。同じ名前で保存すると上書きされてしまうので注意してください。
続いてはカスタマージャーニーマップのGUIアプリ作成の構文です。
書き換え文章 {{title=カスタマージャーニーマップ作成}} {{依頼文章=命令: 制約条件:
出力: |
こちらの構文を書き換えて保存してください。最終的にはマイアプリを開いた際に以下のように、「ペルソナ作成」「インタビューに答えます」「カスタマージャーニーマップ作成」の3項目が表示されていたら成功です。
⑤ターゲットユーザーに合わせて編集する
作成して頂いたアプリは人事担当に特化したアプリになっているのでターゲットユーザーに合わせて変更する必要が出てきます。変更する方法としては作成したアプリを開いて頂き、以下の画像にある白塗りの中の文章を書き換えてください。黄色の塗り部分の文章を変更してしまうと機能しなくなる可能性があるので気をつけて編集してください。
おまけの機能
ChatGPT プロンプトアプリエディタは頻繁に使用するプロンプトをワンクリックで入力することが出来ます。「続けて」、「他には?」、「要約して」、「もっと詳しく」などChatGPTが出力した文章に対して一言依頼したい場合に有益な機能になります。
この機能は以下のような画像にあるUIボタン一覧の一番右にある右向き2つの三角形をクリックするとたくさんのプロンプトが表示されるので必要に応じて使用してみてください。
まとめ
Webデザインにおけるペルソナやカスタマージャーニーマップの作成を助けるために、ChatGPTという人工知能(AI)を利用する方法について紹介させていただきました。ChatGPTはビッグデータから最適な出力を提供するツールであるため、出力されるペルソナやカスタマージャーニーマップが絶対的な正解になるわけではありません。
あくまでも情報収集の時間やコスト削減のために利用していただけるプロンプトとしての紹介なので、ChatGPTから出力された文章をそのままお客さんに提供したりプレゼンしたりせず、ブラッシュアップをしていただければと思います。
僕がChatGPTを使ってカスタマージャーニーの作成まで行なった感想としては、Webサイトのリリース時にとても有益に使えると思います。ビッグデータを用いて無難で普遍的なハズレのないコンテンツ提案ができるからです。
しかし、サイト改善となると話は変わり、サイト全体の数字を分析したりライティングや文章、デザインや機能性のどの面に課題があるのか発見し改善案を建てなければなりません。その際にChatGPTがサイトを分析して課題を発見してくれることは出来ないので自身の目と知識で判断する必要があります。